外務省が推進する青少年国際交流事業JENESYS 2017の一環で、中国高校生訪日団200人あまりの皆さんが、日本を訪れています。今回の視察のテーマは「都市デザイン」。これから日本の都市をはじめて見る中国の高校生に向けて、視察初日の9月7日に、オープニングレクチャーを当研究室へご依頼頂き、助教の永野が「人間のための都市デザインとその次へ」と題し、お話しさせて頂きました。
まず前半は「よい都市の原則」について、考えてみてもらいました。ル・コルビジェやジェイン・ジェイコブスといった人物たちの明快な都市論を聞いてもらうことで、皆さんが暮らしている街・皆さんがこれから視察する街と対峙する上での武器を持って頂きました。
ちなみに、「コルビジェ型の都市と、ジェイコブス型の都市、どちらがよいと思いますか?」との質問には、30%:70%くらいの挙手率。
後半は、日本における都市デザインの事例を、私が関わったところも含めて3カ所ほどご紹介しました。ひとつ当研究室のプロジェクトとしても長く関わりのある、鞆の浦のまちづくりをご紹介したのですが、皆さん非常に興味を持ってくださいました。ポニョの映画も、よくご存知の様子。
80分のレクチャーの後、30分あまりの質疑応答。手が次々とひっきりなしに挙がり、中国高校生の皆さんの積極性に圧倒されました。
特に印象に残ったものとして、次のような質問が挙がりました。
「田舎から都会にどんどん人が出て行ってしまう。田舎のまちを継続するには、何から考えればいいのか」
「観光地ではホテルばかりが建てられている。繁忙期に賑わうのは理解できるが、問題はないのだろうか」
「貧しい人が都会に出て行くときに、そのような人が安心して暮らせる都市づくりは可能か」
「開発が進んで人口密度が上がり高層化される際に、すべての歴史的資源を残せるわけではないと思う。どのような理念を持って臨むべきなのか」
都市問題の本質的なところを問う学生さんが多く、全ての質問に満足な回答が出来なかったかもしれません。しかし、今回のお話を通して、今後解決していくべき都市問題の視点が、少しでも皆さんに備わったなら嬉しく思います。訪日団の皆さん、残りの旅程もどうぞお気をつけて。日中友好会館の皆様も、多大なるご協力ありがとうございました。