学部3年生 外部講評を終えて

修士1年・中戸です。

7月14日の昼下がり、外気温は30℃を超え真夏のような暑さ。

そんな中、工学部14号館の1階、141教室で学部三年生の集合住宅設計演習の外部講評会が行われました。

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▲外部講評会の様子。模型とパネルを囲むようにして発表が行われた

三年生の演習では毎年敷地が与えられ、そこに集合住宅を設計します。今年の敷地は「清澄白河」。数年に一度敷地を変えつつ行われるこの演習ですが、今年は敷地が変わって最初の年で、さらに永野助教の初主担当の年。演習プログラムも以前と少しずつ変えながら、手探りで進めた3ヶ月でした。そんな演習に、僕はTAとして携わりました。


外部講評会の話をする前に、清澄白河と課題の内容について少しだけ。
ご存知の通りの東京の東側、下町風情とアート文化、近年はブルーボトルコーヒーを筆頭とするコーヒースタンドが同居するまち。そして対象敷地は清澄庭園・清澄公園と隅田川に挟まれた場所であり、南には東京都の排水機場が聳え、すぐ北西には立派な清洲橋が架かっています。敷地の中にはセメントサイロあり、読売新聞の印刷工場あり、オフィスをリノベーションしたホテルあり。
さらに今までの演習のように白紙から設計するのではなく、既存の建物を活用しても良いという新たな設計要件が与えられたことで、きっとこれまでになく考えることが多い課題だったように思います。

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▲重要文化財である清洲橋

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▲敷地西側、隅田川沿いの景観

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▲敷地内のコンクリートサイロ

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▲今ではすっかり有名になったブルーボトルコーヒー


このようにコンテクスト豊かな、あるいは豊かすぎて何を軸に考えればいいのかわからないような難しい場所を相手に、三年生は3ヶ月間悩み続け、手を動かし、自分のアイデアをまとめ上げて行きました。13日に最終ジュリーがあり、そこで選ばれた14人が外部講評会で発表を行ったのでした。


前置きが長くなりましたが、講評会を終えて感じたことを、今回はTAとしての立場から書きます。
講評会がジュリーと違う一番の点は、初めて会う人に自分の思いを伝えなければならないこと。毎回のエスキスや中間ジュリーなどでなんとなく何を考えているか・何をしたいのかがわかっているいつもの先生たちではなく、普段実務で都市と向き合っている人たちに対して自分の考えを伝えるということはとても難しいことですが、間違いなく今後の糧になったと思います。

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▲専門家たちの前で説明する学部生たち


発表した人は皆それぞれ個性的で魅力的な設計でした。敷地内のサイロをリノベーションした人、清澄庭園の緑のコンテクストを取り込んだ人、清澄白河の時代性を空間に落とし込もうとした人、川へのビューに焦点を当てた人…。どこにも明確な正答などない問いに対する千差万別の答えを、説得力を持ってプレゼンテーションするということ。それは3ヶ月間考え続けたからこそできることです。

印象的だったのは、6分間の発表と6分間の質疑の中で、「自分はここが大事だと思ったからこの形に行き着いた」「自分はこんな環境で育ってきて、その中で大切だと感じたものをここでも大切にしたかった」といったような、自分なりの設計哲学・思想を言葉にしていたこと。単に形だけではない、形而上学的なことを伝えようとしていた姿に、主体性(あるいは「こだわり」といっていいもの)を感じ、それがこの演習で最も大切なことだったのかもしれないと一人納得していました。

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▲個性溢れる模型の数々。どれも力作

随分と上から目線で書いてきましたが、僕自身、今振り返るとかなり勉強になることも多かったように思います。教えているときにこんな考え方もあるのかと驚くこともいくつもあったし、当時の自分ではできなかった努力と真摯な態度に、眩しさを感じることもありました。


皆、後悔や反省はきっとたくさんあると思うけれど、この課題にかけた膨大な時間と努力は無駄には決してならないと思います。僕もTAとして皆と話をできたことは大きな経験でした。お互いに得るものがあった時間だったと信じて、この演習のTAを終えます。

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▲全てが終わった後の演習室。机に積み上げられたものたちが演習を物語る