D3の矢吹です。6月25日 (日)に開催した都市縮退シンポジウム2017についてレポートします。
このシンポジウムは「人口減少時代のプランニング(都市計画)技術」をテーマに、米国中西部と日本の地方都市の人口減少地区などの取り組みを概観しながら、今後の都市計画技術のあり方をオープンに議論するというシンポジウムです。本研究室の前助教でもある九州大学の黒瀬准教授(都市設計研究室)が主催し、都市工学専攻都市デザイン研究室、都市計画研究室が協力するという形で実現しました。
▲シンポジウムの様子(約100人にご来場頂きました)
昨年から多様な低未用地(空き家・空き地、ブラウンフィールドなど)への包括的な対処方策についての研究ということで、黒瀬准教授と米国中西部を一緒に訪れ、ブラウンフィールドや空き家・空き地の集積する衰退地区の調査や行政組織へのインタビューなどを実施しています(米国の空き家・空き地は産業の衰退に伴い発生し、ブラウンフィールド周辺部が空洞化するという事例が多く存在します)。
その議論で生まれたミニシンポ企画ですが、最終的には約100名に来場頂き、当該テーマへの興味の高さを感じました。
米国パートでは私の博士研究のケーススタディ都市の1つであるミシガン州フリント市を取り上げさせて頂きました。関西学院大の清水陽子先生からは欧米の人口減少の様相とフリント市のマスタープランの改訂を、矢吹からはフリント市のゾーニングの改訂について、みずほ情報総研の藤井康幸さんからはランドバンク事業に関してお話頂きました。
本研究室の歴代教員陣の近刊「都市経営時代のアーバンデザイン」の1部にあるとおり、一口に人口減少時代の都市計画と言ってもその方法は1つではありません。その中で、今回はマスタープランとゾーニングの改訂という「正攻法」で人口減少問題への対応を試みるフリント市を取り上げさせて頂き、その計画技法のポイントや実践段階における障壁についてフリント市の事例を通して深く理解するということが趣旨でした。
日本パートでは人口減少問題を抱え、また斜面都市としても有名な北九州市の取り組みを九州大の志賀勉先生に、牛久市の人口減少地区の状況を日建設計の山田知奈さんにお話頂きました。両者ともきめ細やかな調査・分析により人口減少地区と言いながらも、それぞれの地区の明確な違いがあるところを明らかにされていました。
▲パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでは日米の都市構造や都市計画制度、社会・文化的背景の大きな相違が把握でき、応用性については課題がある一方で、衰退の様相や計画技法に関しては共通点もいくつか発見できました。日米(そして独)の比較枠組みの精査が課題としてあげられました。
第2回は未定ですが、今回扱えなかった他都市(デトロイトなど)などの話も聞きたい!という要望などあれば是非お寄せ下さい。
* * * 調査の一コマ * * *
▲フリント市の様子(空き家・空き地が多数存在し住環境が荒廃している、インフラ更新も課題)
▲ヒアリング調査で訪れたサンフランシスコにて(ブラウンフィールドが再生されて整備された公園で朝食を取る黒瀬先生)
▲フリント市のマスタープランの生みの親であるMegan Hunter氏(現在はカリフォルニア州のSalinas市役所に勤務)
▲デトロイトのグリーンインフラ調査(途中で立ち寄ったハイデルベルグ・プロジェクトにて)