都市設計特論第一:中島直人先生

「企業経営者ブルームバーグ市長のもとでのニューヨークの都市空間再編」ということで、

2015年11月26日、中島直人先生が西村先生の大学院の授業都市設計特論第一の授業をされました。

(*1 ニューヨーク タイムズスクウェアの広場化空間)

タイムズスクエアはグリッドができる以前のブロードウェイとグリッドとの交差点の一つでした。

中島先生はまずブルームバーグ市長の都市運営とそれによる都市空間の再編及びその計画について触れたのち、ブロードウェイ等の公共空間の広場かのプロセスと成果をまとめ、最後にブルームバーグ以後のニューヨークについて講義されました。

最後に中島先生は講義を以下のようにまとめています。

・都市経営上の重要課題としての「都市空間のデザイン」

・優れた専門家の市政登用と分野横断型空間ビジョン・プラン

・りゾーニングとインフラ刷新による都市空間のコンバージョン

・自立的な地区経営との接続

・非営利専門家組織の存在

・手段としてのオリンピック

詳細は参考文献に譲るものとして、本紙では個人的に印象に残った点を二点挙げさせていただきます。

一点目は、やはり市の政策に都市経営の考え方が導入されたことに関してです。ブルームバーグは1981年に通信会社ブルームバーグを設立し、その後世界有数の経済金融メディアに成長させました。そして2002年から2013年までニューヨーク市長を務めています。彼の基本的な考え方は「市をビジネスのように運営する」ということで、市長にCEOとしての役割を与え、市政府は会社、ビジネスや居住者はクライアントやカスタマー、そして都市自体を商品として見立てるということでした。また、単にこの事が重要なだけでなく、経営的な観点からの効率的かどうかというような実務的な話を超えて、都市自体を商品化して考えたときに、都市デザインが持っている価値が都市経営サイドに従来以上に重く受け止められたことが非常に重要だと考えました。公共領域の広場化によって都市固有のイメージを変容させていく必要性や意義が行政に認識されたこと、都市経営上も有効であるということが実験的に証明されようとしているのだと思います。

 もう一点は、都市空間の再編に関してです。ジェイコブス以後の、都市開発に対して非常にネガティブなイメージのある状況に対して、公共空間の広場化による都市空間の再編が正の評価を受けることで、良い開発に対するステレオタイプなアレルギーのようなものが消えていき、あるいはそれが開発に対してより正しい評価と、また建設的な議論に結びついているのではないかということでした。

現在の東京でも東京オリンピックの開催に向けて開発が進んでいますが、より市民に評価される開発、またそれが次の開発に正の影響を与えるような公共空間の再編とはどのようなものがありうるのか考えて行きたいと思いました。

引用一覧

*1

(http://jp.123rf.com/photo_18329108_%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A8%E3%83%BC%E3%82%AF---7-%E6%9C%88-12-%E6%97%A5%EF%BC%9A-%E6%9C%AA%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E4%BA%BA%E3%80%85-%E3%81%AF%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%82%BA-%E3%83%BB-%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB.html)

*2

中島直人(2015)「ニューヨークタイムズ・スクエアにおける「道路」から「広場」への転換」、『アーバン・アドバンス』65号、pp.30-38、名古屋都市センター

中島直人(2015)「ニューヨーク市における公共空間再編の取り組み 都市戦略としての先進的な賑わい空間づくり」『LIXILeye』、9、pp.46-47、LIXIL

中島直人(2015)「ニューヨークにおける都市空間再編の成果」、『ニューヨークの計画志向型都市づくり 東京再生に向けて(中間のまとめ)』pp.33-42、森記念財団都市整備研究所

中島直人(2014)「ニューヨーク市における道路空間の広場化」『都市計画』、312、pp.24-27

中島直人(2014)『都市デザインにおける市長のリーダーシップと公共空間」『都市+デザイン』、32、pp.29-33、都市づくりパブリックデザインセンター

中島直人(2014)『『公共領域』における専門家の活動の最提起」『新建築』、89(5)、pp.187-188、新建築社

中島直人(2014)「次々と『広場』を生み出すニューヨークの都市デザイン」『季刊まちづくり』、41号、pp.48-56、学芸出版社