こんにちは。M2の河崎です。
上野PJでは「第2回アーツ&スナック運動」を10月下旬の3日間にかけて開催しました。一昨年に引き続き、今年で2回目となる本企画では、まちの「ガイトウ」を使って多くの方に街の文化を味わっていただきました。
「アーツ&スナック運動」とは豊かなナイトライフと多様なアーツ(伝統技術・歴史・芸能・アーティストの総称)を掛け合わせて、「文化的歓楽街」としてのエリアリノベーションを目指すプロジェクトです。
対象としている池之端仲町かいわいは、東京・不忍池のほとりに位置し、仲町通りを中心にかつて江戸一流の商舗が立ち並び、「関東大震災までは銀座よりもいい店がたくさんあった」とさえ伝わる街です。
今回2021年10月22日〜24日の3日間にかけて開催した「第2回アーツ&スナック運動」は「ガイトウで文化を味わう三日間」と銘打ち、昨年度誕生した「ガイトウスタンド」を通じて池之端の文化を来場者の方々に楽しんでいただきました。
◎老舗「有職組紐道明」とコラボした組紐スタンドと組紐体験
「ガイトウスタンド」と同じ仕組みで、組紐の組み台を街灯に寄生させた新しい取り組み!まさに街角に街の文化がしみだす光景は素敵でした。
◎老舗「きもの池之端藤井」とコラボした着付け体験スタンド(EMARFコラボ)
着付け体験以外の時間では昨年12月に開催した野外パフォーマンス「雁」の写真展を同スタンドで行いました。
◎ガイトウスタンドの誕生から現在に至るまでのプロセスを紹介する「ガイトウスタンド展」と「ガイトウスタンドツアー」
「2021年度グッドデザイン賞」を見事受賞した「ガイトウスタンド」のお披露目に至るまでのプロセスを紹介するため、工事現場の仮囲いに「寄生」し、90cm×90cmの巨大なパネルを作成・展示しました。
◎街の歴史と文化を紹介する「池之端仲町:地図と写真からみる街にいきづく歴史と文化」展示
江戸〜現在にいたるまでの五つの時期の地図の比較と、仲町通りの古写真を時系列で並べることで、街の歴史や文化をビジュアルで体感できるパネルを作成・展示しました。通行人の方々も足を止めてパネルに見入っている様子が見られ、地元の方々からも非常に好評でした。
◎デジタル木材加工サービスEMARFとコラボした木製ガイトウスタンド
◎全国で発生している「都市に寄生する都市デザイン」を手がけた方々と、寄生の現場から語り合うオンライントークイベント
登壇者の方々が各ガイトウスタンドからオンラインにつないでいるという不思議な風景が通りに生まれました。今回共有したさまざまな知見を生かして、今後の「都市寄生デザイン」をよりアップグレードしていきたいですね。
◎街の特徴的なスナックビルの屋上を紹介する「屋上ツアー」
普段は入れない秘密基地のような場所にご案内。池と街の関係性や歴史的な変遷、現在屋上で行っているホップ栽培の様子などをご紹介しました。
グッドデザイン賞を獲得した「ガイトウスタンド」。そこから様々な寄生の形が生まれ、飲食に限らない利用の可能性が見えてきた3日間となりました。
一方で、通りに新たな滞留を作り出し、それをイベント的・非日常的な風景から日常的な風景にしていくためにはまだまだ課題があることも明らかになりました。
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❶ガイトウスタンドのマネジメントについて
現在は「ガイトウスタンド」そのものは「アーツ&スナック運動実行委員会」によって運営・管理されている状態ですが、これをすこしずつ沿道の飲食店さんに委託していったり、テイクアウトメニューの設置によって収益化していったりとマネジメント・マネタイズの面で検討を進めていく必要があると感じました。
一方で、どの店舗にも所属しない公共席としての「ガイトウスタンド」としての勝手の良さも魅力的であり、上記のような店舗への委託とのうまいバランスを検討していきたいです。
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❷ミニマルでシンプルなデザインの良さ
今回の取り組みではガイトウスタンドに限らない、様々なものが街灯や街へ寄生しました。
そのにぎやかさや発展性は評価できる一方で、オリジナルの「ガイトウスタンド」がもっていたミニマルでシンプルなデザインというのが見えにくくなってしまったという反省点を個人的には感じています。
今回は目に見える形としてのデザインが多かったのですが、通りとしての一体感や、実際に街の人々に使われるデザインを目指す上では、❶で記述したような目に見えないソフトの部分のデザインを今後検討していく必要があります。
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❸仲町通りとその周辺を含めた具体的なビジョンに向けて
対象としている仲町通りは現在17時以降に歩行者専用道路になる通りで、ガイトウスタンド含めた道路占用ができるのも実質的には17時以降の夜の時間帯のみです。
歓楽街として夜の街のイメージがいまなお強い仲町通りですが、多様な人々が安心して使えるストリートを目指す上で昼〜夕方の時間帯でも道路空間を使っていけるような仕組みの更新も求められます。
またガイトウスタンドの設置にあたり適用している通称「コロナ道路占用」では道路の両側1mのみ占用できる状態ですが、より多様なアクティビティを受け止めていくにはこうした占用範囲の拡張にも働きかけていきたいです。
現在「アーツ&スナック運動実行委員会」では仲町通りの「ほこみち」(歩行者利便増進道路)化に向けた活動を行っており、さらには街と池の間にある不忍通りへの働きかけなど、仲町通りにとどまらないその周辺の街路を含めたビジョンを検討しています。
小さなアクションかもしれませんが、今回の「第2回アーツ&スナック運動」の取り組みが大きなビジョンへとつながることを期待しています。