そもそも、なぜ小高プロジェクトで都市内農業?と思われるかもしれません。小高のまちなかには多くの空き地があります。避難指示解除後の小高は、人が住めず傷みが激しい家屋ばかりが立ち並んでいました。これを環境省の補助金で無償で解体できることになり、痛みの激しい空き家はほぼ取り壊されました。こうして、小高には広大な空き地が残されたのです。
そこで、空き地管理手法としてプロジェクトメンバーと住民の方との談義の中から生まれたのが「まちなか菜園」でした。これはまちなかの空き地に大型プランターを置き、みんなで使える菜園を作ろうというものです。2018年度から「まちなか菜園事業」として本格的な取り組みが始まりました。
しかし、大変なのはその運営でした。もしかしたら、都市計画やまちづくりを勉強されている方には「空き地で家庭菜園」というアイデアは珍しいものではないかもしれません。でも、実際に野菜を栽培しようとしても、私たち都市計画を学んでいる者には野菜の栽培技術がありません。思うように野菜が採れませんでした。
そこで、家庭菜園のプロ:はた あきひろ氏に協力をお願いしました。2019年度は菜園講習会を2,3か月に一度のペースで開催。はたさんは販売が目的の農業と楽しく育て家庭内で食べることが目的の家庭菜園の違いや、それに起因する育て方の違いを教えてくれています。
―まちなか菜園事業の説明が長くなってしまいましたね。こうした中で、2月6,7日にはたさん宅を訪問し、都市内農業の事例を視察してきた、というわけです。
これははたさん宅の「一坪菜園」です。自宅の駐車スペース程度の広さの場所を使って、一家族が食べる分だけの野菜を栽培しようというコンセプトの菜園です。
これはお庭のレイズドベットです。直接地面を耕すのではなく、地面の上に囲いを作りその中に野菜栽培用の土を入れることで、耕すよりも気軽に、雑草も抑えて野菜の栽培ができるというものです。
このように、一口に「空き地を活用した家庭菜園」と言っても、その実現には様々なツールを使いこなす必要があります。また、実際に家庭菜園を運営するのは住民の方ですので、「空き地の活用」と言うよりも「自宅の横の空き地で新鮮な野菜が毎日手軽に手に入る」とアピールした方が、家庭菜園のある暮らしがイメージしやすく、メリットが伝わりやすいわけです。
都市計画上、空き地活用が重要視される今、我々都市工学徒が学ぶべきは家庭菜園にあるのではないでしょうか。