URBAN DESIGN STUDIO 最終ジュリー

 こんにちは。修士1年の園部です。

 今回は、12月26日に行われた大学院スタジオ演習の最終発表の様子をお伝えしたいと思います。都市デザイン研究室からは私以外に、應武、沼田、砂川、宗野、Miaoが参加し、9月の課題発表から約3ヶ月に渡ってスタジオに取り組んできました。最終発表では先生方だけでなく、地元で実際に活躍されている方や行政の方にも来ていただきプレゼンし、講評していただきました。

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3つの異なるテーマ
 「RE-DESIGNING TOKYO’S URBAN FABRIC / 東京の既成市街地のリ・デザイン」と銘打たれた2019Aセメスターの大学院スタジオ演習では、本郷・根津を対象地とした歴史文化資源に視点を置いたプレイスのデザイン(Theme A/Place)、Georgia TechなどとのジョイントWSの一部となっていた品川臨海部を対象としたスマートシティ・システムのデザイン(Theme B/New Gateway)、池袋の造幣局跡地などを中心とした持続可能なアーバンランドスケープのデザイン(Theme C/Urban Nature)、とそれぞれ全く異なる、東京既成市街地の抱える問題を取り上げたバラエティに富んだ3つの課題が用意されていました。簡単にですが、それぞれの発表の様子を紹介します。

Theme A / Place
 私と宗野が取り組んだこの課題では、本郷通り沿いと根津一丁目の交差点の一区画という2つの敷地に対する提案を行いました。本郷通り沿いでは、現在の街並みが都市計画道路の拡幅による建築制限によって副次的に出来上がったものだと指摘した上で、将来的に拡幅の計画が解除されると仮定し、それまでの漸進的な更新のシナリオの可能性を模索しました。その一方で、一人の土地所有者の強い意向によって街並みが保たれていた根津の敷地に対しては、高層マンションに代わるオルタナティブとして、現在街並みの構成要素を残し、低容積な段階的な開発を行うことでヒューマンスケールな活動なども一緒に継承することを目指す提案を行いました。

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 講評では、運用や制度的な部分でのさらなる充実の他、本郷に対して、リサーチなどは評価をしていただきつつも、拡幅の計画解除後のデザインガイドラインなどの新たな形態規制の必要性を、根津に対しては、容積に代わる価値としての、他の場所にはないスペシフィックな空間的な魅力の必要性を指摘していただきました。

○Theme B / New Gateway
 品川でのスタジオは、Georgia Techでシミュレーションを行うための比較のためのシナリオ作成のフェーズという多少複雑なワークフローに位置付けられた課題であったため、今回では一番広いスケールを扱い、計画的な視座を持って行われていました。

 スマートシティというテーマから、smart redevelopment / working / living / logistics / mobilityなど複数の観点を設定し、対象エリアを4つの地区に分割し、それぞれに対して用途・容積別に複数のシナリオを用意した上で、総合的により良いものを選択していくという進め方が取られていました。

 計画の検討という抽象度の高い提案だけに、講評では、新しいモビリティや働き方の変化に対する議論が繰り広げられました。

 

○Theme C/Urban Nature
 應武、沼田、砂川、Miaoが取り組んだこの課題では、実際に造幣局東京支局跡地に計画が予定されている防災公園と大学キャンパスを中心に、周囲のサンシャイン文化会館や木造密集地帯なども対象に、水循環をアナロジーとしたグリーンインフラのネットワークを提案していました。

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 雨水の一時的な利用を行うための巨視的なシステムから、木密における屋根勾配の工夫など横断的スケールでの提案だけでなく、人がそれらを楽しむためのデザインなどが模索されていました。総括として、調整池→支流→河川→都市、と多層的なスケールでの汎用の可能性が提唱されていました。

 講評では先生方から、水循環のシステムだけでなく、グランドレベルでのそれぞれの場所のつながりや、災害時に提案したシステムがどのように機能するのかなどの面での工夫を指摘されていました。また、行政の担当者からは、経済的な観点から超高層を前提とした時の街の姿や、開発利益を維持管理に回すなど、グリーンインフラと管理・運営体制をセットで考える必要性など、実務的な立場からのコメントがありました。

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○スタジオに参加してみて
 修士に入って初めてとなるスタジオ演習でしたが、都市計画的なメニューの検討だけでなく、登記簿謄本の取得などから実務的な不動産のビジネスモデルの構築などに取り組み、都市のあり方を考えるのに必要なツールや手法などが学部と比べると一段と拡大した一方で、都市を取り巻く複雑さに真っ向から向き合ったこの機会を通じて、自分の未熟さを再認識することができました。

 また、スタジオ演習の中で、テーマ、スケール、時間軸が全く異なる3つの課題が同時並行で行われていたことに対して、一人のデザイナー・プランナーとして求められる表現や、能力、考え方の幅広さについても改めて痛感せざるを得ない貴重な機会となりました。