カトマンズプロジェクト12月現地調査報告

森朋子

カトマンズ盆地には、ネワール様式の歴史的集落が53あると言われ、震災後それらを保全すべく現地の専門家が立ち上がってはいます。しかし、その全容や実態は、おそらく誰も把握できていません。そこで、我々は今年度からカトマンズ盆地の歴史的集落に視野を広げ、調査を行っています。

PC080281.JPG↑Bode集落の町並み

手前は伝統民家ですが、それ以外は近代的な建物が散見されます。

これまで、6月のプレ調査で枠組みを決め、9月に調査項目を具体化して16集落を調査しました。今回は、その継続・補完調査です。12月3日から10日まで滞在し、①地域、②集落と、③近代化の把握、の三つの視点から調査しました。

①稲作を基本とする農村地域ですので、社会基盤である水利システムは重要な手がかりとなります。Rajkulo(中世の王による水利システム)を中心に、居住域・耕作地などの土地利用を把握しました。

②集落の調査では、居住域内部の空間構造を把握することが目的です。Lacchiと呼ばれる中心広場やお寺、お祭りルートを見ることで居住域の中心と周縁といった空間領域が浮かび上がりました。

③全域で、震災以前に RC造などの非伝統による建替わりと増築・新築によるスプロール化が見られました。現在建設中の家屋も、RC造です。残念ながら、歴史的町並みが全体的に残る集落はほとんどなく、その一部分に見られる程度でした。

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↑1970年代に撮影された写真の場所を特定するために住民へヒアリング
特定後、同じアングルで写真を撮影して来ました。比較できるように整理します。
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↑Thimi集落 壺や鉢などの焼き物を生業とする人々が暮らす地区
ネワール様式の民家が残る中、今も続く生業と共に、大変印象に残る一画です。
同時に、壁が撓まないよう、外から支柱でサポートしています。
地震に加え老朽化が見られ、構造的な補強を含む修繕が必要な状況です。

調査には、毎回現地の修士課程の学生が協力してくれます。彼らにとって日常の生活空間ですが、そこにある秩序性を一緒に読み解いて行くと、大変熱心に調査をしてくれます。私はそこに、ネパールの未来を開く鍵があると信じ、これからも一緒に頑張って行きたいと思っています。