お久しぶりです。この3月に卒業しました、藤原です。
現在は、東京の西の方で公園を調べたり、直したり、作ったりしています。さまざまな活動の自粛が続いていますが、気持ちよく外に出られるようになった日には、ぜひ都立公園に足を運んでいただければと思います。
さて、この度、UDCTak高島平ヘリテージプロジェクトにて『高島平ヘリテージ50 高島平をかたちづくってきた50の都市空間』を出版しました。
この本は、2019年3月の高島平地名誕生50周年を記念して、これまで高島平というまちをかたちづくってきた50の都市空間、「高島平ヘリテージ」を紹介した本です。
本書では、ヘリテージを「今後の継承が期待される地域資源」と定義しています。ここでいう「継承」とは、ただ単に空間が空間として残されるということだけを意味しているのではなく、その時代時代の要求に合わせて大なり小なり変化を加えながら空間を使用していくということをも意味しています。
そのような文脈の中で、計画から50年という歴史を経たまち、高島平において、
① 土地区画整理事業以前からあった自然の要素や集落の構造を継承した都市空間
② 様々な設計・計画意図が込められた土地区画整理事業や団地計画によって生み出された都市空間
③ 住民ニーズや住民運動、地権者の意向に基づいて、この50年の間に徐々に付け加えられてきた都市空間
④ 既存施設のつくりかえ、柔軟な新しい使い方などにより、これまでにはなかった価値を生み出しつつある都市空間
を取り上げています。
今回、これらの都市空間を考える際、常に意識していたことに、高島平を「外」から見るということがあります。つまり、対象となるまち、その中の空間を広域的な文脈で見よう、我々の目の前に現れている空間とその周囲との繋がりを意識しようということです。
その広域的な文脈、周囲との繋がりを検証する際に、板橋区立郷土資料館所蔵の歴史資料、板橋土地区画整理事業、日本住宅公団の計画資料といった公的な資料を使用しましたが、その他に『団地新聞高島平(昭和42年に高島平新聞に改称)』という地域紙も大いに使用しました。高島平で生活が営まれるようになってからのおよそ48年、高島平のリアルな生活を庶民目線で取り上げ続けている、とても価値のある資料です。計画者の視点からの資料だけでなく、計画地で暮らす生活者の視点からの資料があることで、本書により厚みが生まれていると感じています。
そのような豊富な資料をもとに、50の空間がそれぞれどのような価値を有しているのか簡潔に説明していますが、どのような「継承」の方途があるのかを示してはいません。「継承」は「押しつけ」であってはならないですから。この本が微力ながら、「継承」の契機となることができた際に、UDCTak高島平ヘリテージプロジェクトとしてお手伝いできることをすべきと考えています。
高島平団地内の南天堂、大東文化大学内の池上書店にて販売しておりますので、ご近所にお住まいの方はそちらでお買い求めいただければ幸いです。近くに住まれていない方のために、地域貢献会社にこで通信販売も行ってくださっているそうです。
本書の執筆を通して、やはり都市は歴史の上に成り立っているということ、そして、空間には、目的や動機の差こそあれ、何らかの意思が反映されているということ、を再確認しました。
自粛期間、じぶんのまちをゆっくりと見る良い機会です。普段何気なく通り過ぎるまちかどに「おや?」と疑問を持ち、そこに隠された歴史、意図を考え、調べ、そして、働きかけられる。そんな大人になりたい、今日この頃です。