富士吉田プロジェクトの対象地である、山梨県富士吉田市上吉田地区では、地区を横断する国道138号線が、将来的に拡幅される予定です。
一般的には、「道路拡幅=立ち退きや敷地面積減少でまちを出て行かなくてはならない」というマイナスのイメージを持つ方が多い中で、放っておくと沿道のまちが歯抜け状態になってしまうことが危惧されます。
そこで重要なのが、現時点から道路拡幅に向けたまちづくりを進めることです。道路拡幅後の将来ビジョンを事前に議論し、まちに住む人々の間で共有することで、拡幅をきっかけに、より良い町並みや暮らしを実現することができます。このことを、プロジェクトの活動のテーマとしています。
活動を進める中で、まちの将来ビジョンを描こうにも、道路拡幅によって何が起きるのかということについて、地域の方々の中に具体的なイメージがないということを感じました。
実は、学生メンバーの中にも、実感としてのイメージが湧いていません。
そこで、今期は、他地域において道路拡幅後にどんなことが起きたのか、道路拡幅に向けてどのような取り組みがされたのかということを調査し、上吉田地区の方々と共有することに取り組みます。
事例として調査するのは、東京都町田市の小野路宿通り沿いです。小野路宿通りと呼ばれる都道156号線は、2018年に拡幅工事が完了しました。この地域では、住民主体で道路拡幅に向けたまちづくりに取り組み、町田市と協力しながら、町並みの修景や電柱の地中化など様々な取り組みを実現させています。
今回はまず町田市の地区街づくり課に伺い、まちづくり協議会の資料や、拡幅前の写真などをお借りしました。
そして、路線バスに乗って小野路を訪れ、実際に小野路宿通りを歩いてみました。まず目に入ったのは、住宅と道路の境界線に並ぶ板塀です。住宅自体は洋風であっても手前の板塀が揃っていることで、町並みに統一感が与えられています。これは、住民主体で定められたガイドラインによる規定によるものです。
また、道路脇に整備された水路は、拡幅予定線内に含まれていた水路を付け替えたものです。
拡幅をまちをよりよく変えるプラスのきっかけと捉え、住民主体で取り組まれたまちづくりは見事に成果をあげていました。今後、見学した事例の分析を進めて、プロジェクト対象地である上吉田地区で共有し、地域の方々を巻き込みながら議論を進めて行きたいです。