webマガジン特集企画・神戸を訪ねて⑤/神戸まちあるき・新長田編

神戸滞在2日目も引き続き高見さんに案内してもらい、高見さんが活動の拠点にしているという新長田のまちを歩きました!初日に比べ、よりディープなまちあるきになりました。

n1.jpg▲駅前の広場では新長田出身の漫画家、故・横山光輝さんの作品に登場するキャラクターである鉄人28号がお出迎え

新長田は長田港を擁し、かつては神戸西の一大商業地としてにぎわった町でした。第二次世界大戦での焼失を免れたために区画整理が行われず、密度の高い木造家屋による町並みが残っていましたが、1995年の阪神淡路大震災では大きな被害を受け、街並みは大きく変化しました。

駅から南に歩くと新長田にいくつかあるアーケード街の一つ「大正筋商店街」に差し掛かります。

大正筋はおそらく震災後もっとも変化が大きかった場所です。元は下町風情のあふれる商店街でしたが、現在は行政主導の計画により建設された高層ビルやマンションが立ち並びます。下層部に店舗を入れ商店の賑わいを引き継ぐ計画だったようですが、バブル崩壊後であった社会背景と政策が合わず店舗数は減少、シャッター街となってしまいました。

n2.jpg▲大正筋商店街の入り口。かなり力を入れてつくられたことが分かる

震災後、まちとしての評価が下がり、地価も落ちていった新長田。

しかし、そんな状況だからこそ面白い動きがたくさん起こっているのだと高見さんは話していました。

大正筋商店街を抜けると、「六間道商店街」のアーケードに突き当たります。

六間道のアーケードは震災で倒壊せず、1960年に設置されてからそのままに残ってきました。しかし老朽化が進み、屋根のパネルがはがれるなどかなり劣化が進んでいます。

(訪れた当時は撤去の話が出ている、とのことでしたが、正式に撤去が始まったようです。

神戸新聞NEXT 2018/11/26 「六間道商店街3丁目アーケード撤去へ 老朽化で「維持困難」」

https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201811/0011852583.shtml )

n3.jpg▲撤去前のアーケード

そんな六間道で案内していただいたのが、「r3(アールサン)」です。

(HP:http://www.rokkenmichi-3.com/ )

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▲外観から楽しそうな雰囲気が伝わります

「r3」にはキッチンやちょっとしたスタジオがあり、レンタルでの利用も可能。カフェとしての営業やピアノ教室など様々な人によって毎日いろいろなことが行われています。

家主の合田さんのお話で印象的だったのが「安心して自分の子供を育てることができる環境を作りたい」というのがこの場所をつくる目的の一つだった、というお話です。その言葉通り、合田さんのお子さんは現在「r3」を訪れる人々に見守られいろいろなことを教わりながら成長しているそうです。足りないものは自分で作る、それによって周りのまちも良くなっていく、という形でのまちづくりの逞しさを感じました。

n5.jpgn6.jpg▲室内外の家具や設備は家主の合田さんの手製がほとんどとのこと。すごいです

アーケード街から少し離れて、2008年に校舎としての利用が終了した旧二葉小学校をリノベーションした「ふたば学舎」にも訪れました。

(HP http://futabasyo.jp/ )

「ふたば学舎」は公共事業として再生され、現在は指定管理者「NPOふたば」によって運営されています。

内装はほとんど小学校そのままで、教室や講堂、調理室や音楽室などがあり、貸室も主なっています。

戦災や震災を経て残ってきた校舎はなんだか懐かしい感じのする場所でした。

n7.jpgn8.jpg▲外観も内観も昔の校舎そのまま

六間道を東に歩き、次に訪れたのはサービス付き高齢者住宅「はっぴーの家ろっけん」です。

(Facebook https://ja-jp.facebook.com/rokken.happy.home/ )

「はっぴーの家ろっけん」はかなり変わったサ高住です。入ったときからもう賑やかな雰囲気が伝わってきて、自分が知っている所謂ケア施設とは全く違いました。

「誰でも来て良い場所にしたい」という、所長の首藤さんのお話の通り、おじいちゃんやおばあちゃんが座っている横には、仕事をしている人がいたり遊んでいる子供がいたりしています。彼らは「ボランティアとして」「面倒をみるために」いるのではなく、「そこにいたいからいる」ということが伝わり、このような関係性が生まれる場所はとても興味深かったです。

n9.JPG▲アジアの階廊下。特別に中を見せていただきました

特徴的なのは共用部だけではなく、上層階の個室も他では見ないしつらえでした。病院然とした白い壁はそこには無く、アメリカ風、アジア風、アフリカ風…といったカラフルで個性的な壁紙が張られています。ところどころにあるインテリアもレトロ看板のように「余計な」ものばかりです。でも、自分が暮らすなら、全く無機質でつまらない空間より、多少ごちゃっとしていて自分の好きなものがある空間の方が良いよな、と思い、ここで暮らす人々が少し羨ましくなりました。

表通りから少し裏道へ、高見さんご自身のリノベーション中の物件も見学させていただきました!

高見さんはK+action(HP https://kobe-action.com/ )という団体でリノベーションやそれに関連するワークショップを展開中とのことです。自分で自分の家を作る、というのはやはり憧れます。

n10.jpg▲完成形の模型を見せてもらっています

最後は「丸五市場」へ。アジア系の様々な国籍の人々が暮らすことでも有名な新長田。特にディープな雰囲気を醸す「丸五市場」は様々な国のお店で成り立っています。

n11.jpg▲「丸五アジア横丁」と名付けられた通りでは毎月屋台イベントが開催されます

震災による物理的な大きな変化を経て、今は小さなアクションからゆるやかに変わりつつある新長田のまち。

まちを歩くだけではなく、そこで動く方々のお話を聴けたことで、実際の現場としてのまちを垣間見ることができました。

案内してくださった高見さん、ありがとうございました!

n12.jpg▲夕飯は高見さんおすすめのお店で中華を食べました