2020復興デザインスタジオ 最終課題ジュリー

みなさん、こんにちは!M1の鈴木直輝です。今年度からマガジン編集部に参加しております。これからもよろしくお願いします。

『2020復興デザインスタジオ 中間報告』の続報になります。復興デザインスタジオの前半までの内容については、そちらをご覧ください。

復興デザインスタジオの課題③の最終発表が先日行われました。課題③の概要と、発表を行なった7つの班のうち都市デザイン研究室メンバーが参加している班の提案概要とメンバーの所感を紹介します。

復興デザインスタジオ.png▲ A班発表資料より

 

1. 復興デザインスタジオの課題③の概要と最終発表の様子

課題の内容を以下に抜粋します。

・首都直下地震が2050年までに発生する前提で、首都直下地震を中心とした複合災害による被災・復興シナリオを想定する

・各班で選定した地区(または江東区・東京都といった広域スケール)において、複合災害に対する事前復興デザイン(インフラや都市プランニング・デザイン、建築設計、社会システム、法制度)の提案を行う

・複合災害から復興プロセス・復興後の空間像(2050年を想定)を提示する

 

 全体発表では、広域的な目線から分散型避難の実現に向けた提案や、江東区北部の木造密集住宅地や商店街を対象とした提案、江東区南部の臨海部や倉庫群に着目した提案、堀や緑地帯に着目した提案など、様々な着眼点に基づいて提案がなされていました。

 

2. 都市デザイン研究室メンバーの所属する班の発表内容とメンバーの所感について

私の所属する班(チーム東砂)では、『東砂地区内復興計画 散歩道による風景の継承』を提案しました。「COVID-19の問題」や「従来の復興プロセスの問題」を超えた新たな人々の繋がりを構築する必要性がこの提案の背景にあります。

前者に関して、以前から謳われていた「賑わい」「拠点」「サードプレイス」がCOVID-19禍において、ソーシャルディスタンスによりコミュニティの破壊、孤立化が起こりました。Withコロナ社会においては、フィジカルディスタンスを取りつつも人々のつながりを再構築する共有空間が求められています。

後者に関して、従来の復興プロセスでは災害が発生すると平常時のコミュニティや人々の繋がりが破壊され、孤独死などの問題が発生します。復興プロセスにおいて、従前のコミュニティを維持する空間の共有が求められています。

江東区東砂地区は江戸時代以来発展してきた農業や工業などの文脈を残しつつ、現在は商店街や戸建て・団地・マンションなどの住宅地として発展し、そうした市街地環境の違いから人々の動きが分断されてしまっています。

そこで、それらの市街地環境を繋ぐ散歩道によって、重層的所有観のもとで風景を共有し、世代や居住環境を超えた地域の共通言語を獲得することを提案しました。散歩道を通して地域の魅力が発見され、人々の繋がりが生まれることに加えて、散歩道によって各市街地環境の特性を元に助け合いが生まれ地区内復興が促進されることを想定しています。

IMG_0784.PNG▲ 木造密集住宅エリアにおける散歩道 路地単位での協定により散歩道の漸進的構築と住民の参加を目指す

IMG_0783.PNG▲ 集合住宅・団地と散歩道 更新時期に合わせて散歩道を引き込み、良好な関係性を生み出す

 

オンラインでのグループワークのため、最終発表のタイミング以外で他のグループの発表や作業の様子を伺う機会がほとんどありませんでした。そこで、復興デザインスタジオに参加している研究室のメンバーに、

(1)提案概要:所属する班の提案内容の概要

(2)所感:復興デザインスタジオを通して感じたこと

を聞いてみました。その回答を紹介します。

 

河﨑篤史:B班(砂町商店街班)『根地でつながる砂町の根っこ』

(1)提案概要:江東区内でも特に災害リスクの高い木造密集地域・砂町を対象とし、災害時に脆弱な砂町特有の「根っこ構造」を発見した。私たちはその町の脆弱性を克服しながらも、平時の下町の活気やコミュニティを醸成する細やかな空地「根地(ねじ)」を提案する。

(2)所感:災害リスクだけでなく土地の権利や流動的な人口など、さまざまな要素を抱え込む都市において復興を考えるのは、非常に難しさを感じた。一方で日本で暮らす以上、今後も避けずにはいられない「復興」について時間をかけて熟考できた非常にいい機会だった。

B班.png▲ B班発表資料より

 

藤本一輝:E班(モノ班)『モノの避難所 -新木場倉庫群再編計画-』

(1)提案概要:災害時の「ヒトとモノの移動」に着目し、対象敷地として新木場を設定。空き倉庫をアルバム保管庫やペットホテルに「事前転用」し、災害発生後の仮設住宅などへの転用を通じ被災者のニーズを満たし、2050年に域内無人化を実現。

(2)所感:対面での話し合いと異なり「終電」という強制的に議論を打ち切ってくれる存在がいないオンライングループワークでは、空転した議論の収拾がつかず話し合いが午前3時半まで伸びてしまったことも……

E班.png▲ E班発表資料より

 

齊藤領亮:F班(みどり班)『江東グリーンベルト計画』

(1)提案概要:対象とした木場周辺地区に張り巡らされた、内部河川を由来とする線状緑地に着目し、この緑地に地震・水害時の避難や応急対応の空間としての機能を配置しながら、2050に向けた緑豊かな木場の将来像を提案しました。

(2)所感:現地調査や大きな地図を囲んでの検討など、通常の演習でのステップが踏めないことに戸惑いも感じましたが、その分みんなが積極的にアイデアをスケッチや図として議論の場に持ち込んだことで、結果的にとても発想に富んだ提案になったと感じています。

F班.png

▲ F班発表資料より

 

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私たちの班でも他の班と同じように、対面ではないオンラインでのグループワークに困惑しました。議論が発散してしまうことが多いと感じ、話し合いの論点を整理し、明確にすることを心がけました。アイデアをスケッチや図として持ち込んだというF班の取り組みはオンラインでのグループワークに非常に重要だと思いました。

「根っこ構造」「人とモノの避難」「線状緑地」など、読み解いた地域性を生かした様々な観点から復興の提案がなされました。日本では地震や津波、水害、火災など様々な災害リスクがあり、「復興」をいかに捉えるかは非常に重要です。スタジオの課題①〜③を通して、COVID-19や復興に対する考え方の視点を得られたことは大変今後に繋がることだと考えています。

今回の経験をこれからに繋げていけるよう、研鑽を積んでいきたいと思います。