マガジン編集部員のおすすめ本

こんにちは。M1の應武です。

新型コロナウイルス感染症の影響でプロジェクトのイベント自粛が続いています。そこで、マガジン編集部員が時間がある(?)今だからこそ読みたい本をピックアップしました!

【私鉄郊外の誕生 編:片木篤 発行:柏書房】(應武)

近代日本の「郊外」は私鉄によって形成されたと言えます。渋沢栄一が田園都市株式会社を設立し、田園調布の開発と鉄道敷設を行ったことや、小林一三が鉄道敷設、住宅地開発、行楽地開発を一体的に行ったことは有名です。こうした開発は「日本型TOD」と呼ばれていますが、阪急や東急以外の各私鉄が行っていました。

この本はこうした各私鉄の郊外開発の事例を紹介し、その傾向を分析しています。都市計画的な観点はもちろん、経営者の理想や各私鉄の沿線開発競争の様相も見られるこの一冊は、鉄道が日本の都市に「郊外」というものを創りあげていった過程を追体験させてくれます。

【エリアリノベーション:変化の構造とローカライズ 著編:馬場正尊 発行:学芸出版社】(西野)

上野PJを進めていく上で、まちなかの空きスペース/遊休不動産の活用がエリア再生にどのように結びつくのか、そのメカニズムに関心を抱き本書を手に取りました。実は1年前にも読むことを試みましたが、知識が不十分で、また活動するフィールドも持たなかった当時は、うまく内容を咀嚼することができませんでした。

本書は、東京の神田・日本橋、岡山市問屋町、大阪市阿倍野・昭和町などエリアリノベーションの主たる事例を6つ紹介しています。不動産オーナーやテナントに対していかに動機を与え誘導していくか、不動産契約の枠組みの設定からマンツーマンでの説得といった話まで詳細に述べられています。改めてまちを動かす主体のマンパワーの重要さを痛感するとともに、上野というフィールドにいかに還元し得るか考えさせられました。

【バルセロナ旧市街の再生戦略 公共空間の創出による界隈の回復 阿部大輔・著 学芸出版社】(宗野)

バルセロナというとセルダによるグリッド型の都市拡張計画が有名だが、本書では1980年代から取り組まれた旧市街地の再生について主に扱っている。バルセロナの旧市街地は現在でこそ観光で訪れることのできる場所になっているが、ひと昔前は、過密で薄暗く、建物は老朽化している状況で、公衆衛生・治安の劣悪な、住民以外は寄り付かない場所であった。この旧市街において、地区レベルの綿密な調査に基づき、老朽化した建物を選択的に取り壊し、広場や街路などの公共空間に転換していく。旧市街地に公共空間を少しずつはめ込み、多孔質化していくことが、本書における再生戦略である。新たな公共空間の誕生により、周辺一体の風通しが良くなり、日が差し込み、新しい歩行者の流れが生まれる。住環境としても商業の場としても価値が高まり、周辺の建物が民間の力によって修復されていく。本書では、この再生戦略について、法制度や財政的な枠組み、計画主体などあらゆる面から総合的に分析している。また、都市レベルでの考え方から、各地区における具体的な取り組みまで、幅広く扱っており、読みきれないほど充実している。

この本を初めて読んだのは、学部生の春休み、コルドバからバルセロナに向かう鉄道の中であった。今回書評を書くにあたり読み返してみると、当時よりは内容を理解できたように感じたが、まだまだ噛み砕ききれない。実務を通して日本の法制度の問題点がわかるようになってから読み直したいと思う。

皆さまも自宅での生活を充実させていきましょう!