緊急トーク・イン「どうするどうなる 丸の内のスカイライン」
パネリストの意見
山本坦氏のご発言
山本坦(ひろ)と申します。
去年の11月18日の夕刊に「政府が緊急景気対策120項目、都心商業地容積率最大1300%に」と出ました。それでですね、この説明を出すね、これの説明が...「有効事業促進策、都心中心地の容積率を最大1300%まで引き上げ...」というようなその内閣の対策が今日出ました。そうしている内にですね、毎日新聞のやはり去年の11月の21日ですね、「ビルの高さ、統一を」...で、何が統一かと申しますと、いま西村先生のほうから御説明がありましたけれども、11月20日に第4回の懇談会が行われて、ついにビルの高さを「『統一感の持てるように誘導していく』ことでまとまった。」と出ております。そして「31mの高さで景観がつくられてきました。しかし100mクラスのビルが多くなり、今後は150m程度の建築が行われると見られている。さらに拠点になる地区では、200mほどのビルも考えられる。」という、ちょっと何かギョッと...やっぱりギョッとします。そしてこの、ここでもう一つキャッチフレーズを募集しておりまして、容積率が1300%200mの高さの街について、もう具体的に募集をしております。こういったことが私が生まれ育ちました千代田区で今起こっているんです。日本の都市というのは、政府と経済がつくっていくものであって、市民の立場というのは、なんとなくというか、これは実感としてですけれども、シャットアウトされてしまっているような気がします。こういった記事がどんどんどんどん発表されて、超高層建築が建っていくような状況。なんていうんでしょうね、都市の一番大事な、千代田区の千代田城のお城を我々は持っているわけですが、こういう素晴らしい景観を持っているのに、マンハッタン計画といいますか、それが進んでいく。私もニューヨークに長く住んでましたが、ニューヨークやテキサスのカンサスシティに行くと、あの真ん中にバカッと高いものが建ってるし、何かこのままいきますと、例のあれですよ、クローン羊、そんなようなクローンシティというような感覚が生まれてきます。そしてクローンというのは「一母胎から分離・増殖した有機体群」というのが辞書に載っておりますが、まさにフィーリングとしてはそういう感じです。
Sense of place, Sense of Century
そしてもう一つ、日本の顔、日本という個性を考えるときに何が重要なのでしょうか。この間、六本木のラフォーレでもって、ブリティッシュカウンシルの主催で、イギリスの建築家の方、そして日本は安藤(忠雄)さんと東大の鈴木(博之)先生がおいでになりまして、その席で鈴木先生でしたか、「sence of place」つまり場所のセンスということをおっしゃいました。そうするとこの場所のセンスというものを考える必要があるんじゃないかと思います。
それともう一つ、私は、センスの問題でつけ加えたいと思いますのは、昨年12月の皆さんご存じのように、地球の温暖化で京都でもって会議が開かれました。それでCO2、二酸化炭素の問題が話し合われました。そういった環境面での配慮というか、20世紀最大の廃棄物である二酸化炭素が、ここでどう処理したって出てきます。としますとね、ここで考えられますのは「sence of century」世紀のセンスということ。それをやっぱり考えいく必要があるのじゃないかと思います。
じっくり考えること、みんなで考えること
私たまたま東京都の景観のほうに出ておりまして、ここでですね2月16日にシンポジウムが開催されますが、そのキャッチコピーが「意識しています、東京の景観」。ですから、これをみんなでやって意識しましょう、東京の景観を。やっぱり一人一人が考えないと、景観という言葉が悪いのかも知れないんですけれど、みんなでもって千代田区、都心4区と、それから東京都の景観を考えることが重要じゃないでしょうか。ここはみんなでじっくり考えて、急ぐ必要はないと思います。いろいろと意見を出し合って、それで地権者それから行政も一緒に話し合うこと。ゆっくり考えていきたいと思います。東京都でもって今度、景観条例ができました。東京都のほうも頑張って景観に顔を向けてきてくれています。千代田区のほうも景観に顔を向けてきていただいているところです。それで結局、昔からいる市民として、気持ちの悪いクローンシティには住みたくないし、さて、といってもうちは11代続いておりますから、こっから出ていくような気分には毛頭なれません。やっぱりなんか、住みよい、息のできる場所であって欲しいと思います。それから都心の千代田区は現在人口は34000人ぐらい。ずいぶん都心の空洞化が進んでおります。ますます空洞化して、従来住んでいた人間、それからこれから住もうとしている人間が出ていってしまうこと、で、こういう建物というのは我々の世代ではなくて、次に伝えていくものですから、会場には若い学生の方が沢山いらっしゃいますし、次の世代でこういうものを残したら、どう考えるでしょうね。これは、壊すとしても非常に経費がかかりますし、いろんなことを考えますと、やっぱりみんなで良く考える必要があるんじゃないかと思います
これは、官民、我々と行政が一体となって、焦らずに、結論に飛びつかず、ゆっくりと時間をかけてお勉強していきたいと思いますので、どうぞ皆さん東京の景観には感心をお持ち下さいませ。お願い申しあげます。