緊急トーク・イン「どうするどうなる 丸の内のスカイライン」
パネリストの意見
二瓶正史氏のご発言
二瓶です。よろしくお願いします。さて、私はこの模型を西村先生の研究室で最初に見たときに、非常にギョッとしまして、それはマンハッタン計画を最初に見たときもそうだったんですけれども、良いなんていう人は、はっきり言っているのかなと...まあ、いないでしょうね、結論から言うと。こんなものは。その次に、なぜ変なのかなって、自分なりに考えてみたんですよ。建物というのは街との結びつきで成り立っているという考え方があって、それから考えると、丸の内の街区にそういう建物が建つというのは、建築と街との結びつきが非常におかしいものになっているんじゃないかという予感がしたんですよね。
私は昔、陣内秀信教授と一緒にいろんなそういう、イタリアではそういうのをティポロジアと呼んでいるんですけれどもね、いわゆる都市と都市の建築というのは非常に綿密な関わり合いを持っていて、いろんな生活と深い関わり合いを持っていて、歴史的に形成されてきたということを勉強してきました。
この丸の内というのも、明治23年に三菱が当時の明治政府から払い下げをうけたわけですよね。それから一番最初に明治27年に、ジョサイア・コンドルの名建築である三菱1号館というのが、ここにできあがったわけですよね。その時にですね、四軒長屋時代といっているらしいですけれども歴史の世界では、要するに銀座レンガ街とおなじような建物がですね、銀座レンガ街みたいな建物がこの沿道沿いに街並を切り開くような形ででてきたと思われるんですね。それで、その次に、先ほどロンバート街の写真がありましたけれども、「一丁ロンドン」という言葉があるんですが、いわゆるロンドンにあるようなレンガ造りの建物がこの沿道沿いにできてくるんですね。さて、街並については煉瓦造りの建物がこの道路に対してできてきたと。ちょうど一丁ロンドンみたいな街区型の建物がある形で。現在のような街区ではなくて、もっとちっちゃな街区を単位として、建物がでてきているわけですね。さて、この次に、今度は一丁ニューヨーク時代と言うらしいんですけれども、丸ビルに象徴されるような、そういう街区型、道路じゃなくて街区型の建物ができてきている。これは先ほどからでている31mの建物が、ヨーロッパみたいな街区型の建物なんですけれども。まあこういうふうに見てきたら、明治27年から昭和27年の新丸ビルまで、ざっと60年、三菱は街をつくってきたんですが、さすが三菱、というように、街のつくりかたと建築のタイプというか、新たな時代の建築の形と言いますかね、非常に結びついた形でこの街をつくってきたわけです。ところが、マンハッタン計画を見ますと、街と建築の関係が非常におかしいですよね、それで西村先生の研究室のお部屋で調子に乗って、じゃそこもかしこも全部やってみようとやってみましたよね、その時にすさまじい風景になりましたよね、誰が見たっておかしいですよね。ですから、今あるこの丸の内の街区を前提条件として、ああいう建物を建てたとしたら、非常におかしい事態が沢山発生するであろうと。進士先生がおっしゃるような造園学的な問題もあるでしょうし、防災的な問題もあるでしょうし、もしくは交通計画みたいなことも出てきますよね、道路のこと。新宿の副都心じゃないですから、そういったことも出てくる。そう言うようなことを勉強していきたいなと思っているんです。
オフィスの質と量
今日は三菱の方が来ているかどうかわからないんですけれども、天下の三菱地所みたいなディベロッパーというか不動産会社が、新宿の副都心みたいに、質じゃなくて量で勝負しようと思ったら、私はもうおしまいだと感じますね。ネタじゃなくて量さえ増やせばいいっていう時代は明らかにもう終わっているわけだから。
昔は丸ビルに入っているっていったらもうすごいエリート事務所で、あこがれの的であったわけだし、人が住める丸ビルだったわけじゃないですか。それが、その何の変哲もないような、ただ量だけでやっているようなオフィスであれば、それを求めて来る人なんていませんよ。だから、そんなことは今の時代にはそぐわないから、今まで、明治27年から昭和27年まで、三菱は頑張ってやってきたんだから、それはそう言ったプライドを持って、きちんとやってもらいたいなと思いますね。
環境、社会に対する責任
それからもう一つは、先ほども出ました皇居との関係の中で、広い見晴らしの関係との中でこの地区のことを考えなくてはいけないなと言うことを非常に感じますね。というのは、おおかた素晴らしい景観というのは、見る方と見られる方とが街を共有して楽しんできたわけじゃないですか、それは半蔵門会館のように、見ることばっかりを考えて、自分の責任は全くない。やっぱり自分がそこに建てる建物は、すごく社会的な責任を持っているはずですから、使うことばっかり考えないで、自分が環境に対して義務することも、環境に対して考えていかないと、とてもじゃないけどまちづくりっていうのはできないんじゃないかなと。そういうだいたい三つぐらいの観点が、ちょっと頭に浮かんできたものですから、その三つの観点がどういうふうに結び付くのかっていうのは全然まだわかって来ないんですが、一応そういうようなことを考えております。