緊急トーク・イン「どうするどうなる 丸の内のスカイライン」

パネリストの意見


多児貞子氏のご発言

 東京駅の会の多児と申します。よろしくお願いいたします。私はいつも裏方で、こういう風にお話しするのは初めてですけれども、ある意味では運動の経過を一番知っているのかなと思っているので。東京駅の問題を通じて丸の内の問題を明らかにできればいいかななんて思っています。

 東京駅の再開発問題が起きましたのは、ちょうど11年前になるんですけれども、1987年の4月です。当時金丸副総理と国土庁長官、運輸大臣それから建設大臣、この4閣僚が集まりまして、東京駅周辺地区の再開発に関する調査を行うということが決められました。で、なぜこういうことが決められたかというと、これは10年経ったから言ってもいいかと思いますけれども、ある著名な建築家が東京駅の高さを100mの高さにして、今のスカイラインをそのまま上にに持ってくるという計画を出したんですね。で、その計画をJRの方にプレゼンテーションしたり、その模型を持って東京駅長に見せたりしたんですが、当時の東京駅長は「人の土地にそんな勝手なことをしないでくれ」って言って追い返したそうなんです。ところがその建築家の方は非常に政治力のある方で、各大臣とか役所を動かして、その直後の4月23日に、「東京駅周辺地区再開発に関する連絡会議」っていうのがつくられまして、その場で東京駅とその周辺をどうするかっていう審議が始まったわけですね。

 その後、建築の歴史をやっていらっしゃる先生方が、これは危ないということで勉強会を始められました。私たちも、少し後から、勉強会をしているんじゃ間に合わないんじゃないかということで、その年の12月13日、鉄道記念日の前日だったんですけれども、東京駅の駅長さんとJR東日本の杉田社長さんに要望書を持っていきました。その時の要望書に赤いバラの花を添えて、これから仲良くしたいという、そういう気持ちを込めて要望書を出しにいったんですけれども。その直後、新聞などで非常に大々的に取り上げていただきまして、全国各地からメッセージが寄せられました。それを受けまして、12月に今私たちがやっている市民の会というのができたわけですね。この会ができた直後から、国会請願のための市民活動を始めました。この署名は10万人を目標にしまして、最終的には10万票をちょっと越えたんですけれども、衆参両院でいろいろと審議されまして、どちらも国会の場では採択されなかったんですね。一つは、予算的なことをやってもらってないとか、それと、耐震診断の結果がでていないとか、ということで国会では不採択になったんですけれども、本質的な国民の声というのは無視できないと思いまして、国土庁の方は、東京駅は形態保存という方針が、翌年の6月頃発表になりました。

形態保存ということ、市民運動の継続へ

 私たちは、これでもう安心だ、もう問題は終わりだって思ったんですけれども、その時もやはり建築家の先生方が、「いやこの『形態』の部分っていうのは気をつけなきゃいけないよ」っておっしゃったんですよね。建築を保存するっていうことじゃなくて、形態を保存するっていったいなんだろう、もしかしたらファサードだけ残すことかもしれないし、部分的にはちょんぎっちゃうかもしれないし、今の建物を全部壊して全く新しくするかもしれない。いろんなことが考えられるわけですね。で、そういうことは、この東京駅をどうするのかっていう方針がはっきりとでるまでは運動は終わらないということなんですね。そんなこんなで10年以上続けてきました。

 余談ですが、私ども東京駅の会の女性たちは、毎年2月14日になりますと、バレンタインチョコを持って東京駅とかJR東日本の社長さんのところにお伺いするんですね。まだ私たち運動を続けたいよっていうメッセージを込めてチョコレートを持っていくんですけれども、去年チョコレートを持っていったときに、非常に画期的なお話をいただきました。これはですね、東京駅は昭和20年5月25日の空襲で、相当にやられてしまいまして、当時の形じゃないんですね。空襲の後2階建てになって以来は、今のような形になっちゃったんですね。で、何とか昔の形に復元したいというようなことを私たちは前からいっておりました。

企業は市民の声を聞くか

 今までの会の運動を通じて東京駅の保存と復元をJRの方にお願いをしてまいりましたが、実は去年の2月14日に、JRとしては東京駅の復元を考えているということを初めて伺いました。その伺った話というのはJRっていうのは、株式会社になるときに、二分の一株式を上場したわけですね。で、後二分の一が残っていたんですね。それを上場して、全く民間になったときに、自らの意志で復元を決めたいということだったんです。ただし、その時は株主の意向がありますけれどもっていうことなんですけれども。でも今は景気が悪いんで、残りの株が上場されるなんてのはずっと先のことだと思いますけれども、自らの意志で復元するということを初めて公におっしゃられたんですね。

 JRという企業というのはあくまでも利益を追求するという私企業なんですけれども、市民の声に耳を傾けてくれつつあるように感じます。

 今回のスカイラインの問題に関しても皆さんが運動を起こしていこうという姿勢に私は非常に感動いたしました。ただ、情勢の中で、これがどういう方向に転ぶか判らないということがありますので、丸の内全体の計画とそれから東京駅、東京駅の抗議というのはこれから絶対に続けていかないといけないなと思います。

 模型を見ておりますと、心の故郷とか東京の原風景とかいっている東京駅がこんなにも小さく見えて、何か寂しいなと思います。いつまでもほっとする東京であってほしいなと思います。簡単ですけれども以上です。


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