緊急トーク・イン「どうするどうなる 丸の内のスカイライン」

パネリストの意見


小林さえ氏のご発言

 私は、この丸の内を守る会に混ぜていただいたという立場でして、この会にはたくさんの方がいらして、本当に多士彩々なんでございますけれども、なぜか私が丸ビルと同い年という理由で代表ことになりまして、今日ここでお話をしなければならないことになりました。全く自分は素人でただの主婦でございますので、まとまったお話もできないんでお聞き苦しいことと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

東京の原風景

 私は東京に生まれて東京に育っておりまして、今日風な残っている建物からそれこそ七十何年、丸の内というのは、やっぱりなんていうか、東京にいる者にとっては原風景だと思って育ってまいりました。つい最近まであったんですそれが、昨年丸ビルが壊されるまでね。

 東京の歴史というものを考えますと、それまで二千年の歴史の中で、日本の都は京都であったわけで、明治になりまして本当に人心を一新するというわけで思い切って都を東京に移したわけですね。それで天皇の住まいとしては千代田城を利用したわけですが、それから国民が営々として築き上げて今日みなさんがごらんになるような東京駅、そして東京駅前のビル街、そしてその二つをつなげております行幸道路を通して向こうに皇居があるという誠に立派で美しい日本の表玄関ができあがったんだと思います。それを作り上げるには本当にたくさんの国民の血のにじむような努力がそこに込められているんだと思うんですね。そうしてできあがった、それこそ美観、美しい景色は東京の人だけではなくて、東京はまあ日本の首都ですし、この丸の内というのは日本の東京の玄関、すなわち日本の玄関ですから、この丸の内の美しさというのは国民みんなの財産じゃないかと思うそういう立場で、何とかこの美しさを守っていきたいというのが私たちの会の立場なんでございます。

丸ビルの思い出

 それで実は昨年は、何とか丸ビルを残していただけないかなと思って、一生懸命に努力いたしましたんですが、力及ばず今あのようなことになってしまいまして、でもまだその他に、東京駅、東京駅はもちろん日本を代表する名建築で、それが大正3年ですか、それはちょうど明治のはじめから西南戦争、日清、日露、というような戦争もあったし、それから殖産興業という大変な全国的な躍進もあってそのエッセンスとして日本の中心のオフィス街としての丸の内が成立したわけですね。特に丸ビルというのは当時非常にモダンな、日本で最初に建ったオフィスビルということで、しかも東京駅という名建築の真ん前に建っていて、その名建築に引けを取らないほどの建築としての立派さがあったと思うんですね。それで、私なんか子供の時のことを思い出しますと、丸の内にすごくいろんなビルが建っているんですけれども、どのビルも全部会社なので、入れるところは、丸ビルだけが商店街になってて入れるというような、まあ市民として親しみを持てたビルなんですね。で、そういうのは非常に奇特だったと思うんです。ですから、本当にあれはただのオフィスビルではなくて、市民のためのビルというような面もありまして、何とかこれを残してもらいたいという気持ちの中で昨年一生懸命にやったんですが、あえなく壊されてしまいました。

東京駅と皇居、その街のでき方

 それで、今申しましたように丸の内というのは、東京のまた日本の原風景だったんだとつくづく思うんですけれども、これは私のほんとに個人的な経験と申しますか、ひとつはこのごろの流行で、海外あちらこちらの国の訪れたりするんですが。とにかく一国のセントラルステーションがパレスと向かい合って、しかもここに立派な駅と広場ががひとつになってて、それから周りが整然とした建物が並ぶ、の中で、そしてだいたい今までは30mぐらいの高さのビルが美しく揃ってて、そういう街というのはおそらく東京だけじゃないかと思うんですよね。そういうことを考えますとこれは世界的にも値打ちのある配置、街のでき方ではないかと思うんです。今、丸ビルが150mや200mになると、すごく美しさのバランスを失すると感じますね。本当に良くないと思うんです。率直なところ。

 だから、こういうことに対して、容積率とかそれから企業側の営業の声とかそういう次元ではなくて、もっと国民の場所というような考え方を、一人一人の人がまじめに考えて、自分の問題としてこんな物ができてしまったらどうなるんだということを切実に考えてみる必要があるんじゃないかと思います。で、私は切実に考えなくちゃならないと思ってこの会に入れていただいた訳なんですけれども、市民一人一人がどういうことを考えているかそれを言わないと人に理解してもらえないというようなことをすごく思いました。そういう意味で、こういう会を設けていただいて、ほんとにいろんな方にいろんなことを考えていただいて、そのご意見を伺うということは非常に大切なことだと思います。今日はこんなつまらないことを申し上げてしまいまして、大変失礼いたしました。 


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