【東京都による都心の位置づけ】
ここでは、東京都がどのように都心(大手町・丸の内・有楽町地区)を考えてきたかといういきさつを整理します。
業務施設や商業施設が抱える課題と今後の姿を展望するとともに、東京の都市づくりの方向性を示したものです。「東京都住宅マスタープラン」とともに、職と住の均衡のとれた多心型都市への指針となり、また都市計画に定めて推進すべき事項については、「市街化区域及び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針」や「都市開発方針」、区市町村マスタープランにも反映していくなど、既存の都市計画との整合を図っていくとしています。
このなかでは都心を「業務商業重点地区* 」に指定しています。
* 業務商業重点地区
業務商業機能の積極的な育成又は再編を図るとともに、住宅や公共的空間などを含めた良好な市街地環境を形成するために、一定の都市づくりの目標を定め、総合設計制度、再開発地区計画制度など、公共と民間が協力して良質なまちづくりを行うために用意された手段を活用しながらその目標の実現に努める地区。
「生活都市東京構想」のもと都が目指す多心型都市づくりの一環をなすものとして、『副都心育成・整備指針』、『多摩の「心」育成・整備指針』と並んで都市整備の基本指針となるものとして位置づけられています。
ここでは大手町・丸の内・有楽町地区を含む一帯を更新都心*1 として位置づけ、オフィスビルの建て替えを適切に誘導するため、都市開発諸制度*2 を積極的・弾力的に活用するとともに、公共と民間の協働によって計画的まちづくりに取り組む方針を示しています。
*1 更新都心
・政治、行政、経済の中枢機能の集積や都市基盤などすでにあるストックを生かし、国際社会に対して、わが国を代表する地区として立地すべき区域
・個別建て替え等に応じて、積極的な機能更新を図っていく区域
・設定基準として、
政治・行政・経済の中枢機能が高度に集積していること。/これらの中枢機能を支える都市基盤の整備がなされており、機能更新のための基盤条件が整っていること。/ 建築物の老朽化が進んでおり、また、執務環境の改善が求められる地区であること。
*2 都市開発諸制度
一定の公開空地等を設ける建築計画に対して、容積率を割り増すことができる、「再開発地区計画」「特定街区」「高度利用地区」「総合設計」をいう。
業務商業重点地区に指定された地区では、都市開発諸制度を活用して業務商業施設を設ける場合に、容積率を割り増すことができる上限値を他の地域より高く設定する方針を提示しています。但し、都心では、容積率の割増部分を事務所とすることはできず、育成用途(交流施設*1 、文化施設*2 、活性化施設*3 )を設ける場合のみに適用を限っています。
*1 交流施設
国内外からの多様な人や情報が交流する場となり、新たな価値を創造することを支援する施設(例)会議施設、ホール、宿泊施設等
(特定の企業、団体のみの利用に供するものを除く。)
・会議施設とは、国際会議場、貸会議室等をいう。貸会議室であっても、一般事務所と明確に分離されていないものは除く。
・ホールとは、イベントホール、その他多目的ホールをいい、文化ホール等も含まれる。
・宿泊施設とは、ホテル、旅館等をいう。
*2 文化施設
歴史的・文化的遺産を継承し、あるいは新たな都市文化を育み、発信する場となる施設
(例)歴史的建造物の保全・活用施設、劇場、美術館、図書館等
*3 活性化施設
都心の周辺に居住し、又は都心を訪れ、あるいは都心に働く人々の多様な生活・活動を支え、街のにぎわいや魅力を創出する施設
(例)物品販売業を営む店舗、飲食店、医療施設、街区内貫通通路等
・物品販売業を営む店舗には、百貨店、スーパー等も含む。
・店舗、飲食店において、「風俗営業等の規制及び業務の適性化等に関する法律」に該当するものは除く。
・街区内貫通通路とは、当該ビルの出入口であるとともに通り抜けが可能で、建物の休館日等であっても自由に一般の人が出入りできる通路をいう。
業務商業重点地区内の街区について、指定容積率*1 の最大値を従来の(基準容積率*2 +200%)から(基準容積率+300%)に変更しています。ただし、以下の条件がつけられています。
・千代田区・中央区・港区では割増容積部分を事務所用途とすることはできない。
・業務商業重点地区内の街区は、割増容積率のうち200%を超える部分については、別に定める育成用途としなければならない。
*1 指定容積率
特定街区により指定される容積率(%)をいう。
*2 基準容積率
用途地域に係る都市計画において定められた当該地区の容積率の最高限度をいう。
業務商業重点地区を指定対象地域の一つとしています。育成用途の容積が100%以上であれば、決められた大きさの広場等*を確保することにより最高300%まで容積率が緩和されます。
* 広場等
高度利用地区内の建築物の敷地内に設ける空地のうち、日常一般に公開される部分で壁面の位置の制限により確保する空地に隣接し、かつ、100平方m以上の面積を有するものをいう。