住民意識啓蒙によるまちづくり活動活性化に関する研究
ー香川県志度町を事例としてー
A Study of Activating Community Activities by Enlightening the Inhabitants
-A Case Study of Sido, Kagawa-
36106 中條 由規

The purpose of this study is to activate community activities. On and after 1960s, the activities have been put in practice in many local governments in Japan. But some of them have been stagnant for various reasons. The author takes notice ordinary inhabitants are less interested in community activities and try to activate the activities by enlightening the inhabitants.
The first part of this study determines the object and target of the campaign for enlightenment by hearing researches. The latter half is a case study of the Local Plan for the Promotion of Sido Community. Through the review of the plan, the author knows the sense of the inhabitants have been not a little changed and expresses the task for the campaign for enlightenment.

はじめに
(1)研究の背景と目的
 1960年代以降見られる住民参加のまちづくり活動は今日多くの自治体で実践されてきている。60年代の反対運動中心のものから、70年代以降は自治体における自治権が確立していく中、自治体レベルでの住民のまちづくりへの主体的な参加の重要性が認識され、萌芽的、先進的な取り組みが行われるようになってきている。その例としては、まちづくり協議会が中心となった地区的レベルの住環境整備事業などの活動である。
 そのような全国で試みられているまちづくり活動の中には、人材不足、時代背景、資金不足など様々な原因で停滞してしまう例も少なくない。そういう様々な停滞原因の中でも、本論文では住民活動に参加していない人の意識の低さといったものに注目した。
 住民活動活性化のために、一般住民の意識啓蒙が必要と考え、啓蒙活動の具体的事業として香川県志度町の地方振興事業計画を取り上げ、そのレビューを通じて住民意識がどのように変化していったかを調べ、意識啓蒙についての可能性を探る。
(2)研究の流れ
 第1章において、住民参加によるまちづくりの必要性について再認識し、停滞してしまう活動の原因について考察する。その中でも、特に地域住民の意識の低さというものに注目し、意識啓蒙の重要性を認識する。第2章においては、地域住民に対して行ったヒアリング調査をもとに、まちづくりに対する住民意識を分析、分類し、各グループの特性を調べ、本論文における啓蒙活動の対象者と目的を明確にし、啓蒙方法について考察する。第3章では、具体的事例として、香川県志度町独自の地域振興事業計画を取り上げ、計画の効果、問題点について検証し、今後の課題について言及する。また第4章においては、地方振興事業計画の問題点の1つである行政組織上の問題についてさらに考察を進め、マトリックス組織の導入について検討する。そして、第5章にまとめと今後の課題をまとめる。

1まちづくりの抱える問題点の考察
 まちづくりは主に、行政と住民が連動しあって活動を推進していくものである。そして、その呼応システムに何らかの支障が生じた場合、それが活動発展の壁となる。そういう支障は、住民組織側の問題、行政組織側の問題といくつかに分類できるが(表-1)、それらの問題は多岐にわたっており、それらが複雑に絡み合っていることからまちづくりの活性化は困難な問題であると言われている。そこで、それらを関係図(表-2)としてとらえた時、活動に参加していない住民の意識の低さが他の停滞原因に影響を及ぼしていることから、非参加者の意識啓蒙がまちづくり活動の活性化にとって有効であると考えられる。

2住民意識レベルの分析とその啓蒙
 1において意識啓蒙の必要性について述べたが、ここでは取り扱う意識がどういうレベルのもので、どこまで持ち上げるのかを明確にする。住民をまちづくりに対する意識によって分類したものにいくつかの所見がある。(1)(2)それらを図-2に示したが、本論文では、住民活動に参加していない人の意識の啓蒙ということで図中の点線内の住民意識をヒアリング調査により詳細に分類していく。
 ヒアリング調査の回答結果から、分類のための設問を設け、最終的に10個のグループに住民意識を分類した。その結果と各グループの特徴、意見などについて表-4、表-5に示した。

3香川県志度町地方振興事業計画の分析
 ここではまず事業計画のねらいと特徴について明らかにする。そして実施した計画の内容と成果について分析することにより、この計画の効果と問題点を明らかにする。最後に上記の考察をもとに事業計画をより効果的に機能されていくための戦略的課題を論述する。
(1)志度町の概要
 インタビューを、志度町長、行政職員、県議会議員、町議会議員、社会福祉施設関係者、住民組織リーダー、四国新聞社、地域住民に対して行い、また、過去の事業についてのレビューを行った結果、志度町の抱えている問題とその対応についてまとめた(図-4)。この図から、志度町の抱える問題は2万人前後の地方小自治体に一般に見られる問題である。そこで志度町の地域振興事業計画に対する考察は一般的拡大も可能といえるであろう。
(2)事業計画の目的
 この計画は、自治体の縦割り行政からくる弊害により従来聞き取られなかった住民の要望をくみ取り、実際に物をつくり住民に示すことで住民の関心を高め発意を促していこうとするものである。
(3)事業計画の特徴
自治会→総務課→担当課→自治会
1.事業は住民の要望により行われる
2.総務課が要望を一括して受け取る
3.要望の採択基準が設けられている
・複数の課、他の機関というように権限がまたがり対応しにくいもの
・事業により生活環境の向上がみられるもの
4.事業実施にあたっては迅速な対応のために補助金を使用せず、特別予算をあてる。
(4)要望内容の検討
 事業計画の結果165件の要望が提出され、そのうち11件が採択された。その内容を図-5-氈Aに示す。
(5)地方振興事業計画の分析
(6)地方振興事業計画の効果
(7)地方振興事業計画の問題点
(8)地方振興事業計画の今後の課題
4.結語
◎従来住民活動の非参加者という範疇でまとめられていた人の中にも、意識啓蒙の可能性があり住民活動を活性化させる要因となる人が確実に存在する
◎意識啓蒙の可能性のある意識層の特徴を明確にしたことで、行政への不信感を取り除くという事業が啓蒙活動の1つの方法として成り立ち、住民活動の活性化にとり有効であるということ
◎具体的事業方法として、要望を汲み取り答えていくという単純なものでもわずかながら意識啓蒙につながること。さらに、その前後の要望抽出までの住民間での話し合いと成果物の広報が事業をより効果的に機能させる
◎同じ事業計画が適用されても、システムとして確立していない場合、住民意識の変化の仕方に差が生じてしまうこと
◎課題で述べた点を今後検討していくことで、学習の1つの手段として組み込まれる可能性があること

○今後の課題
 ◎アンケート調査の仕方の検討
 ◎他地域の意識啓蒙活動との比較により、意識啓蒙の問題をより明確にする

[本文中参考文献]
(1)宮西悠司(1986)「地域力を高めることがまちづくり」都市計画143
(2)田村明(1994)「現代都市読本」東洋経済新聞社
[主要参考文献]
児玉善郎(1993)「住民主体のまちづくりに対する支援システムの研究ー世田谷まちづくりファンドのケーススタディーを通してー」都市計画学会学術論文集
島尾勝ほか(1993)「住民参加による緑化活動の組織化に関する研究」造園雑誌56
西山康雄ほか(1981)「まちづくり教育の概念と展望」都市計画116
西村幸夫(1994)「環境学習へ向かうまちづくり」都市問題第85巻第5号
首都圏総合計画研究所(1985)「まちづくりの現場報告」まちづくり研究25号
坂田期雄(1984)「住民参加と情報公開」ぎょうせい
太田和紀(1990)「自治体組織の活性化ー新しい地方自治体をつくる考え方と効果的実例」ダイアモンド社


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