既存住宅地に於ける集合住宅街区計画手法に関する研究
 〜空地条件を重視した都営住宅街区更新計画〜
A Study on Planning Methods of Collective HousingBolck in Detached Housing Area
Renewal Plan of Metropolitan Housing Bolcks Considering the Condition of Open Spaces
26104 西村 賢洋

 The purpose of this study is to suggest a planning method of urban collective housing blocks located in the detached housing areas. The sutudy will concentrate on the condition of open spaces between blocks.
 Resently, the establishment of a planning method is needed. In contrast to western cities, the relationship between detached housing blocks in Japan must be taken into consideration. Rather than foucusing on collective houses with courtyards, the author examined the condition of open spaces, not inside of the blocks but outside. As a case sutudy, the author appliedthese concepts on Metropolitan houses, after having noticed the tendency of isolation between blocks.
 After a general survey of 1)the history of collective housing block plans, 2)arguments about the block in housing area, and 3)policy of Tokyo metropolitan goverment, the author did feldwork research on many areas where some detached housing and collective housing blocks border each other. The author considered considered a method of classiffication of the detached housing blocks, using two axes:1)the amount of open spaces and 2)the potential of creating comon spaces with the opposite block. Having analyzed and cllasified some collective housing blocks, the author used some indexes regarding open spaces to examine the relation of both categories. Finally the suthor allocated some concrete methods to assess the categories. But some problems are left to later sutudies.

(1)研究の背景と目的
 集合住宅の内、面的に広がりをもつもの。つまり、周囲を街路で囲まれ、一つの街区を形成しているものを街区形成型集合住宅とすると、その計画手法はこれまで主として、郊外部に立地するものを対象として研究されてきた。中には、郊外部での規範をそのまま、既成住宅地内に持ち込んだ時期もあった。しかし、昭和50年代のタウンハウス等の低層集合住宅に端を発し、既成住宅地内独自の集合住宅街区の計画手法が模索されている。現在は、中庭型集合住宅がその代名詞として用いられつつあるが、地区全体が中層化された西洋の諸都市ならともかく、戸建て住宅で形成された既成住宅地内に、敷地一杯の中庭型住棟をそのまま導入するのは適切ではない。
 そこで本研究では、集合住宅街区が既成住宅地内で、一つの街区として如何に機能すべきか、という点に着目した。そして、街区内部での空地条件に着目しがちであった従来の研究に対し、中庭型集合住宅を意識しつつ、街路に面した部分の空地条件の重要性に着目し、その計画手法あるいは規範を考察することを目的とした。

■都営住宅の隔絶性
 現在、東京都内の既成住宅地内(主に都心を覗いた外周部を対象とする)で、街区形成型の集合住宅を考える時、最も目につくのは都営住宅の存在である。特に区部の西部地域(練馬、中野、杉並、世田谷、目黒、品川、大田)には、382団地が存在し、その8割が住居地域に属し、規模も9割弱が1ha未満となっている。現在では都営住宅の供給の中心は新規から建て替えへといこうしているが、特に1種住専においては、3層の中層住棟を如何にして周辺環境に調和させるかが問題となっている。
 しかし実際には、都営住宅に関するイメージや施設利用状況のアンケートを見ても、負のイメージが大きく、決して周囲に溶け込んでいないことが分かる。現在では、隔絶性の改善が、都営住宅の今後の施策の主要な柱の一つとなり、様々な提言、試みが行われている。
 これを踏まえて、本研究では、物的計画の側面から隔絶性の改善手法を考える。具体的には、前述した様に、街路に面する空地条件を考慮することとし、既成住宅地内都営住宅の今後の物的計画を、本研究でのケーススタディーと位置付けたのである。

    図1 研究のフロー

(2)集合住宅街区計画の系譜
 表2から、戦後の集合住宅の街区計画は、
^平行配置、均一型
_グルーピング、内に閉じた囲いこみ型
`街区形成型、外に開くストリート型
a初期の街区対応型、周囲との関わりを考慮しつつも内部共有領域の重視
b内に閉じつつ、外に開く市街地融和型
と変化していることが分かる。
 今後の市街地内在型集合住宅においては、街区内部では集住性故の利点を住民が享受しつつ、外部への都市的アメニティの提供者たることが求められている。この時注目すべきは、同潤会アパートの計画技法の先進性である。街路野性格に応じた街区計画手法は、現在でも参考とすべき点が多い。また、50年代のタウンハウスについては、現在でも評価は高い。しかしその欠点として、低密さ以外にも、周辺市街地或いは隣接がいくとの関係の希薄さも指摘できる。
 また、既往研究を概観すると、領域論研究や密度論、あるいは計画論研究など様々であるが、物的計画の観点から、街区レベルでの周囲との係わりを調べたものはほとんど見当たらなかった。

    表2 集合住宅街区計画とその背景の概略

(3)住宅地の街区論に関して
 前節を踏まえ、「外に開く」集合住宅という概念を、街区レベルの物的計画の中で、具体的にどう捉えるかを、ここでは検討した。そこで、戸建住宅街区に関する既存の議論を概観してみた。
 まず、街区の定義を、「ある幅員以上の道路、或いは地形・建物で囲まれた土地のまとまり」とした。街区の内、計画的なものについては、わが国では平城京や平安京の条坊制に明確な起源が見られる。当時のコミュニティの単位は「街区」であったが、時を経て、街路を中心とした「両側町」いわゆる街路区へと変化していったことが知られている。また近世には、街区中央部に空地を集合させ、「会所」という一種の中庭を持っていた。
 しかし近代から現代にかけ、敷地の細分化による空間的過密化が進み、問題視されている地区も多い。一方で、広幅員道路等で市街地整備された地域では、モータリゼイションの進行と併せ、街路を介した街区間の交流は極めて少なくなりつつある。
 このような状況を反映してか、街区に関する研究も、街区と建築物や敷地との関係から、街区内の物的環境を考察したものが圧倒的に多い。しかし一方で、「街路は街区と街区を繋ぐ役割を果たす」という観点に着目したものも、若干ではあるが、見られる。
 小林は(文献`)、領域論に着目し、比較的薄い結び付きである「挨拶圏」は地区の空間構成に影響されることを示した。また街路に袋路がぶら下がるクラスターを構成している時、街路はただの通路となり、逆に何らかの核を共有しているような時、街路は、挨拶圏を含む「開かれた共有領域」となるとしている。さらに開かれた共有領域形成のため、住戸の視線とアクセスが向くことが重要であるとしている。
 また林は(文献a)、都市型集合住宅の要件として、道路空間と敷地内に空地を持つこと、日照条件を利便性とトレードオフし、採光条件に切り替えることを主張している。これらを踏まえると、都営住宅の隔絶性も、団地の街路への係わり方の不備に一つの原因があると、考えられる。そこで本研究では、「外に開く」を、「対面する戸建住宅と、外周路で、開かれた共有領域を形成する。」と解釈し、その条件を満たす空地条件、あるいは集合住宅計画手法を考えていくこととする。具体的には、集合住宅の外周路に面する空地の、規模と形状の二つのバランスの中で考えていく。

(4)集合住宅街区としての都営住宅施策の検証
 _、`での知見を踏まえ、都の方針や東京都住宅局の報告書、既往研究のレビューあるいはヒアリング調査を通じ、都営住宅の隔絶性に関する方策がどのように位置づけられているかを検証した。詳細はここでは省略するが、周辺地区との融和を求める姿勢は伺うことができた。しかしその具対策としては、
○地域レベルでの融和のため、地域コミュニティ施設の建設
○街区内部での共有空間形成
○視覚的景観からの周囲との融和
に終始しているものが多い。ここから期待される地域融和は、偶然性が支配するものや人的交流に直結しないものなど、`での開かれた共有領域形成とは若干、意を異にするものである。
 街区レベルでの周囲との空間的係わりについては、
○日照条件の確保
○プライバシーの保護
が主となっている。つまり、否定的要素の削減を図るのみで、積極的に交流を求める姿勢は伺うことはできなかったのである。日照条件の確保のため、北側に児童公園を設ける例も多い。しかしこの場合、後節の調査を通じての私感ではあるが、立地条件、具体的には視線・アクセスが集中するとき、交流の核として機能するが、そうでない時はむしろ、隔絶性を助長している事例も多かった。小林は公営住宅の役割として、
○オープンスペースの提供
○生活空間野提供
○文化施設、利便施設の整備
○地区の防火帯としての機能
を挙げている(文献c)。その中で、オープンスペースと生活空間が上手く連携するとき、市街地乃立地にふさわしい開かれた共有領域を形成すると思われる。しかし現状のまま、あるいは現在の方針に従った場合、より高度に利用されるべき空地空間が、非効率的に利用・供給されることが懸念される。
 都営住宅の建替要件には、戸数が従前の1.7倍(木造)あるいは1.2倍(耐火、簡易耐火)という項目もある。また、第6期住宅建設5箇年計画では公営住宅の平均床面積を95Fに広げる目標も唱われている。これらを踏まえると、今後、住居地域内の都営住宅の建替を高層化瀬図に行う場合、街区計画、あるいは街路に面する空地の計画が極めて重要になってくるといえる。

(5)集合住宅街区に隣接する戸建住宅の現状
 前節までの議論を踏まえ、集合住宅街区と、隣接する戸建住宅街区の関係について考察していく。
 先ず、戸建住宅の現況調査として、世田谷区及び中野区(共に^の西部地域に属す)内で、集合住宅街区と戸建住宅街区が街路を破産で隣接する箇所を、住宅地図より抽出した。この29団地、59街路に面する戸建住宅について、以下の項目を調査した。

    表3 戸建住宅の調査項目

詳細な結果は省略するが、方位の影響が極めて大きく、特に密度(建蔽率)が低いほどその傾向が顕著になる。
 本研究ではあくまでも、集合住宅の街区計画について考えるため、戸建住宅の現状に対応して、集合住宅の計画手法を考察する立場をとる。そのため、戸建住宅の受ける影響を考慮していない。しかし、集合住宅街区の空間構成が、隣接戸建住宅の建替に及ぼす影響えを調べることは、今後の課題として提言できよう。
 また調査結果を踏まえて、既成住宅地の中でも、低層高密住宅地を対象とすることとした。
 高密住宅地は以下の性質を持つ。
○空地空間が不足し、生活が街路に及ぶことが多い。
○アンケート調査により、日照やプライバシーと、集住性から生じるコミュニティ形成などの利点がトレードオフされやすい状態にある。
○方位の影響も比較的受けにくい。
それ故、集合住宅街区計画を、空地供給性と開かれた共有領域形成性のバランスの中で考えていくことに意義があると思われる。
 逆に、低密住宅地では以下の性質を持つ。
○低密故、集合住宅街区の空地配分を考慮する必要性が少ない。
○塀が高くなり、視かも生活が敷地内で完結しがちであり、街路に生活行動が及ぶことが少ない。
このため、集合住宅街区と開かれた共有領域を形成する意義や、街路に面する空地について考察する意義が希薄になっている。これが対象外とする理由である。
 そこで、前記調査街路の内、平均建蔽率が50%以上のものを対象として、集合住宅街区との係わりを考えるための類型手法を考察した。
 具体的には、空地供給性として、敷地内で街路に面する空地を前面空地とし、その敷地面積に対する割合である前面空地率を一方の軸とし。開かれた共有領域形成性としては表4の指標を総合させて、もう一方の軸とした。
 この後、以下の手順を経て図化を行った。
@. 各住宅につき、前面空地率で横軸上ににプロットする。
A. 視線、アクセス、塀の性状ごとに2なら上方、1なら不動、0なら下方に、各前面空地率での効果の分量だけ移動させ、最終点を決定する。

    表4 開かれた共有領域形成の指標

この時、縦軸は相対的な指標であって、結して絶対的な比較ではない。また、視線・アクセスと塀の効果が前面空地率によって異なるのは、空地率が大きいほど塀の影響が強くなり、視線・アクセスの影響が小さくなる点を考慮してのことである。(図9を参照)
 これにより、各街路の表現は可能になった。図5の中で象現1や2は、3や4よりも共有領域形成性が高いといえる。実際、街路をこれに従って類型すると、縦軸は相対的であるため、相互の比較関係ではあるが、それなりに現状を表わすと思われる。
 特に図7は、典型例を示しており、上部街区は変則的な街路割のため、極めて閉鎖的であるが、下部街区は標準的な街路割り故、開放的街路となっている。
 これを基に、対応する集合住宅街区計画を考察していく。

    図5 図化の過程と類型化
    図6 図化の例(上:開放的街路 下:閉鎖的街路)
    図7 閉鎖的街路と開放的街路の典型例

(6)前面空地条件を考慮した集合住宅街区の考察
 前節を受け、前面空地条件を基にした、集合住宅街区と隣接高密戸建住宅街区の整合を図る。先ず、主に空地供給に主体を置いて整合を図り、その後、ひ等枯れた共有領域形成についての考察を加える。
 この時、高密住宅地に集合住宅地が整合させる意義、つまりどのような住宅地を理想として誘導を行うのか、という疑問が生じる。確かに、高密住宅地自体、望ましい状態にはない。しかし、現状の都営住宅を見る限り、皮効率的な空地供給を過度に行うことで、隔絶性を助長していることは前に述べた。それならば、高密住宅地特有の、集住性の利点で環境の悪さを打ち消す効果に期待し、空地基準と領域形成のバランスの中で、双方が共に高まる方向へ導くべきだ、というのが本研究の立場である。

1. 前面空地条件による集合住宅街区の類型
 4章の調査での都営住宅15例、公営住宅16例、非公的住宅45例の適切な事例を収集し、空地に関する項目を測定し分析した。項目としては、
◎前面空地率 街路に面する空地面積の敷地面積に対する割合。前面空地の、街区における規模的比重を表わす。これは、空地面積を街路長で除した前面空地奥行とほぼ比例関係にあり、大凡、(前面空地率)=2.5×(前面空地奥行)の関係が成立することが分かった。
◎戸当たり空地面積 街区空地面積を戸数で除した値。空地利用の集約度を示す。
◎前面空地用途 前面空地の利用分類は表8。

    表8 前面空地用途

この内、生活行動空間のあり方が一つのポイントである。これが街路に面して上手く計画された時、開かれた共有領域形成の核となる潜在力を持つと思われる。
 収集事例について、前二つの指標を軸とした平面上にプロット後、そこに用途を示し、その分布状況を見て、全体の類型あるいは枠組みを設定した。(図9)
 この内、類型1,2,3では、非公的住宅が主流となっており、前面空地用途も、重複するよりは、前面空地率の増加に応じて曖昧→緩衝→サービス→生活行動へと変化していく傾向が強い。つまり、類型2で始めて生活行動空間が前面に持てることが分かる。
 また、類型4,5には、非公的住宅も分布するが、都営住宅がここを中心としている。前面空地用途は複合利用が目立つ。
 このグラフ上で今後の都営住宅の方向性を示したものが図10である。aで述べた様な、住戸面積拡大要求や密度増加要求は図中のグラフ外の矢印の方向性として示される。これに、住居地域故の非高層化を考えあわせると、今後の都営住宅の方向性は、グラフ中の矢印で表わせよう。
 この時、現状の板状住棟のままでは、高層化以外に密度上昇の手法を欠くばかりでなく、周辺空地が全て平板で段階構成に乏しくなり、共有領域形成の妨げになる様な用途も表に出てくる、などの理由からも、その限界が指摘できる。実際、類型1,2,3では板状住棟はほとんど存在せず、囲み型あるいは何らかの中庭を持った形式が適当となってくる。

    図9 空地尺度を用いた類型
    図10 都営住宅の現状と方向性

2. 空地条件を媒介とした戸建住宅との整合
 では、戸建住宅地での集合住宅街区は、どの様な前面空地条件そ満たすべきか。そこで、集合住宅街区と戸建住宅街区の整合性を考える。具体的には、双方の類型の組み合わせを、空地条件の観点から、基準を用いて評価する。先ず、これまでの調査を基に、図11の様なモデルケースを想定した。ここでは調査結果から
 (戸建前面空地率)=−4*(建蔽率)+240
 (集合住宅前面空地率)=−4*(建蔽率)+200
の関係も前提としている。
 また基準としては、佐藤滋による居住環境整備基準を用いることとした。これはグロス容積率に対する、空地延床比率2)の基準を示すもので、住民の居住環境評価と日照条件との関連から求められたものである。
 そして、標準モデルでの計算を行い、各ケースでの、集合住宅街区類型の枠組みを基準図上に示した結果が図12〜15である。3)
 これより、街路幅拡大あるいは、戸建住宅前面空地率拡大に応じて、基準をクリアする部分が大きくなる様子が分かる。
 ここで都営住宅の場合を考えると、前述した方向性は、ここでは下方あるいは右法への矢印となる。これと居住環境整備基準とを考慮すると、ほぼ基準線状がバランスのとれた空地条件を満たすことになる。戸の時。条件によるが、集合住宅の類型2が妥当な場合が多くなる。

    図11 標準モデルの設定
    図12〜15 住環境整備基準を用いた、前面空地条件による戸建住宅と集合住宅の整合

3. 各枠組みでの前面空地計画手法
 空地供給性からの整合が可能になった。次に、開かれた共有領域形成についての第一段階として、集合住宅の前面空地計画手法を調べた。
 主に非公的住宅事例を基にして手法を示し、各類型に割り当てたものが図16である。(類型5,6は省略)類型1では、中庭との係わり方や階段室の配置、居間のとり方が計画上の留意点となる。類型2では、まとまった空地が可能になり、生活行動空間の配置が留意点となる。また、類型4では、私庭が持てるようになり、その配置や空地の段階構成も重要になってくる。本研究では、戸建住宅の開かれた共有領域形成とこの具体的実態調査及び領域形成指標の絶対化が要される。しかし、都営住宅の今後に関して、ここまでの結果を踏まえ、若干の提言は行えよう。
 今後の都営住宅の街区計画あるいは前面空地計画では、類型2を中心とすべきことは先にのべた。この時、生活行動空間を上手く配置すれば、開かれた戸建住宅街区に面する場合には、共有領域の核を形成することが期待できる。その場合、実現性のある提言として、
○片廊下型住棟から、世田谷区で活用されている通抜式の階段室型住棟への移行。
が挙げられる。これにより視線、アクセスの向きが双方向になるからである。また課題も多いが、
○同潤会で用いられている様な、凹型住棟の採用。
も、実現すれば、この空地を生活行動空間とすることで、核形成の潜在力増に寄与するといえよう。
 また閉じた戸建住宅に対しては、類型4の、戸建住宅を利用した中庭・街区形成も有効と思われる。

    図16 各類型における前面空地計画手法
    図17 同潤会凹型住棟

(7)結語
 これより、高密な戸建住宅地での、集合住宅街区計画、そのなかでも前面空地計画に対し、一つの考え方を提言できた。これまでも、既成住宅地なりの、街区型集合住宅の計画規範の必要性は述べられてきた。しかし、その手法の一つとして、空地条件を用いて具体的に示したことに本研究の意義があると思われる。
 今後も、街区形成型集合住宅の計画に際しては、集合住宅前面空地から隣接戸建住宅前面空地まで、一体的な中で考えることが必要である。その際の誘導策として、「世田谷区まちづくり条例」に基づく、「住環境貢献度」も参考になろう。
 最後に今後の課題として以下を挙げる。
○開かれた領域形成指標の絶対化と、集合住宅前面空地計画手法の実態調査による、領域形成性と整合性の明確化。
○集合住宅街区の戸建住宅建替への物的影響の明確化。

【脚注】
1)普通、建蔽率40%以上を高密地区とすることが多いが、ここではネット建蔽率の為、50%を用いた。
2)空地面積の延床面積に対する割合。
3)佐藤は基準として、グロス空地延床比率と、駐車場などを除いた自由空地延床比率を示している。ここでは、前面空地の空地延床比率のため、後者を採った。
4)空地の確保などに対してポイントを与え、割増融資を行うもの。
【主要参考文献】
^まちをつくる集合住宅研究会「都市集合住宅のデザイン」彰国社 1993
_東京都住宅局 「新しいまちづくりにむけて 都営住宅と景観」 1991
`小林秀樹 「集住のなわばり学」彰国社 1992
a「すまいろん」 1991春号 住宅総合研究財団
b材野博司 「都市の街割」 鹿島出版会 1989
c小林英?他 既成市街地整備に於ける公営住宅団地の更新の役割 日本建築学会大会学術講演梗概集 1991.9
d佐藤滋 密度を尺度とした居住環境計画の方法論に関する基礎的研究 早稲田大学学位論文


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