伝統的建造物群保存地区の調査

福井県・上中町(熊川宿)



UPDATE 1999.6.14


 <研究室プロジェクト>
福井県 上中町熊川宿の紹介
文化庁文化財保護部「伝統集落における歴史的環境整備を中心とした地域活性化方策の調査・検討 報告書」(1998)より抜粋

^熊川宿の概況
柱F川宿の概況
 熊川宿は通称「鯖街道」といわれた若狭街道の宿場町で、若狭と京都間の物資輸送の結節点として栄えた。地形的には南側に山裾が迫り、北側は北川を挟んで山並みまでやや平地が開けている。北川は物資輸送など、熊川宿の発展を支えてきた。集落は上ノ町、中ノ町、下ノ町の3地区から構成され、中ノ町には旅篭、運送業者、問屋が軒を列ね荷継で賑わった。国鉄小浜線が全通すると、熊川宿の物資輸送の結節点としての役割は薄れたが、街道をバイパスする国道303号の開通により、熊川宿は上中町のなかで宿場町の集落形態を良く留めたまま現在にいたり、その歴史的町並の価値が注目されるようになった。
@人口・世帯
 1996年統計では、熊川地区の人口354人、125世帯である。上中町全体では、人口8022人、2078世帯であるが、1970年に減少が止まり、以後、ほぼ横這い状態である。高齢者の割合は高く、年々増加している。
A地区の動向
 宿場町としての機能は失われ、一部に商店等の商業と製造業が見られるが、居住者の多くはサラリーマン化し、住宅への用途転用が進んでいる。
B観光入り込み状況
 観光に関する正確な統計はないが、若狭鯖街道熊川宿資料館「宿場館」の入館者数を見ると、少なくとも月500から1500人の来訪者があったことが確認できる。地元のヒアリングでは、歴史的街並みとして注目されるようになってから、熊川宿を訪れる人は多くなり、特に福井県内からの来訪の割合が高いと見られる。宿泊施設は、現在、下ノ町に1軒のみで滞在型の観光の受け入れ体制は未整備の状況にある。

東F川宿の町並み景観
@熊川宿の町並み景観の特徴
 集落は、旧街道近くまで迫る山並を背景に、北川と平行する形で東から上ノ町、中ノ町、下ノ町と連続した街並を形成しているが、中ノ町と下ノ町の境に曲がりと呼ばれる意図的につくられた屈曲部があり、景観に変化を与えている。旧街道に沿いには清冽な用水路・前川が流れ、各戸の前には「かわと」と呼ばれる洗い場が設けられ、景観の特徴をつくり出している。
 中ノ町は位置的に熊川宿の中央にあり、かつては御茶屋、藩蔵などが置かれる中心部であった。現在でも郵便局や公民館などの公共施設や社寺が集中する。
 集落を構成する建築物は、町屋を主に土蔵などが見られる。形式的には平入と妻入が混在し、構造的にも真壁造と塗込造が混在しながら、連続性のある街並景観を形成している。背後には水田、畑が、山裾あるいは北川まで連なり、店、住居、田畑、自然(山、川)、社寺といった一連のミクロの土地利用も景観の特徴をつくり出しているといえる。
 また、旧街道とほぼ直行するかたちで、山側、川側双方に何本かの路地があり、街道沿いに線的に展開する景観に奥行きを与えている。
A町並み景観の変化
 伝統的建造物群保存対策調査の実施された1981年当時の町並景観と現在を比較すると、一部をのぞき特に大きな変化はない。

白ャ並み保存の経緯(年表)
1975   福井大学福井宇洋助手を中心とする町並調査の実施
1981   福井大学・文化庁による熊川宿伝統的建造物群保存対策調査の実施
     「熊川宿町並みを守る会」発足
1985   R日本ナショナルトラストの町並み調査の実施調査で地域の子供達を対象とした町並み再発見
      ワークショップの実施
1994.5  逸見勘兵衛家、逸見諒氏より町に寄付
1994.6  町並み通信「宿場町」第1号創刊
1995.1  「旧逸見勘兵衛家」町文化財に指定
1995.3  住民参加で熊川まちづくりマスタープラン作成、熊川全戸に配付
1995.8  第1回若狭鯖街道熊川宿まちづくりフォーラム開催(以後毎年開催)
1995.9  熊川区役員会総会で保存条例制定、重伝建選定に向かうことを決議
1995.12 保存地区、保存計画を決定、告示
1996.3  建設省の「歴史国道」に選定
1996.7  重伝建地区の選定、文部省告示
1996.10 旧逸見家入居式(熊川宿ゲストハウス)
1997.5  若狭鯖街道熊川宿資料館「宿場館」開館
1997.5  文化庁・建設省「文化財を活かしたモデル地域づくり」の選定(全国10選)

_町並み保存とまちづくりの取り組み
衷纈町熊川宿伝統的建造物群保存地区の概要

涛`統的建造物群保存地区に関連する組織
 【上中町伝統的建造物群保存地区保存審議会】
 【若狭熊川宿まちづくり特別委員会】
 【熊川地区総合整備推進委員会】

箔`建地区内の事業
@伝統的建造物保存修理事業
Aその他の建築物保存修理事業
B旧街道等修景事業
 【ふるさと特別対策事業(町事業)】
 【第1種特定交通安全施設等整備事業(県事業)】
 【農村総合整備事業(町事業)】
 【夢のあるまちづくり事業(町事業)】
 【上中町特定環境保全下水道事業(町事業)】
蕪`建地区外の社会資本整備の動向
 【河内川ダム建設(県事業)】
 【県道河内熊川線の整備(県事業)】
 【西口公園の整備(構想)】
 【琵琶湖・若狭湾リゾートライン建設計画(構想)】
膜流施設整備
 【若狭鯖街道熊川宿資料館「宿場館」開館】
 【熊川宿ゲストハウス】
 【「道の駅」整備事業(県および町事業)】
翼\フト面での取り組み
@町並み保存の質的向上をめざして
 【町並み相談員制度】
 【町並み保存に関わる地元技術者の育成】
 【デザイン・コントロールマニュアルの作成】
A住民の意識啓発をめざして
 【町並み通信「宿場町」の発行】
 【若狭鯖街道まちづくりフォーラム】
 【語り部の会】
B町並み保存活動の支援
 【基金の設立】
 【木製の郵便受けの購入補助】

`今後の課題
駐`建地区にかかわる課題
@伝建地区の範囲
 【旧街道沿いで、伝建地区に含まれていない部分の修景誘導】
 【伝建地区周辺のバッファーゾーンの設定】
A伝統的建造物の修理、復元の体制
 【町並み相談員制度の充実】
 【地元技術者の育成】
B工作物・環境物件の保全、修理
 【土木的工作物・環境物件の修理の考え方】
 【道路などの土木的構造物の修景】
 【歴史的風致の保全とエコロジー】
C空き家対策

涛`建地区周辺にかかわる課題
@伝建地区との景観的調和
A社会基盤整備の景観的影響
 【河内川ダムへの取り付け道路の修景問題】
 【旧街道北側の国道303号の位置】
伯流施設にかかわる課題
@交流施設整備のコンセプトの明確化
A交流施設と地元住民の関わり